アメリカの里親制度の特徴は?児童養護の現状や日本との違いを解説
最終更新日
公開日2025.02.06
アメリカの里親制度は、多くの子どもたちに家庭環境を提供し、安定した生活をサポートする重要な仕組みです。
日本でも里親制度は存在しますが、アメリカの里親制度および児童養護の現状には、多くの特徴があります。
本記事では、アメリカの里親制度の特徴や児童養護の現状、そして日本との違いについて詳しく解説します。
アメリカの児童養護の現状
アメリカでは年間12万組の養子縁組が行われており、要保護児童の約70%が里親や養子縁組などの制度により新しい家庭を得ています。
このように養子縁組が広く行われている背景にはいくつかの理由がありますが、
最大の要因は「親権剥奪」の仕組みがあることかもしれません。
アメリカでは児童虐待が疑われる場合、まず警察が子どもを保護し、
その後1カ月にわたって徹底的な調査が行われます。
その後、18カ月にわたって家族機能を正常化するための援助プログラムが適用され、
半年ごとにその効果が確認されます。
18カ月経っても状況が改善しない場合は、親の意向に関係なく、
子どもは親の手を離れ、里親や養子縁組などのパーマネントケアが適用されます。
現在、アメリカでは「養子縁組」が一般的な選択肢となっており、
養子として生活する子どもたちも特別視されることなく、
親子ともにその事実を自然に受け入れているケースが多いようです。
アメリカの養子縁組をサポートする民間団体
アメリカでは養子縁組が一般化しており、養子縁組をサポートする民間団体の活動も活発です。
例えば、政府と民間が共同で運営している「Adopt US Kids」という団体では、
家庭を必要とする子どもたちの顔写真とプロフィールをWebサイトで公開し、
子どもを望む家庭とのマッチングを行っています。
この仕組みでは、養子を希望する人が子どもを選ぶだけでなく、
家庭を求める子どもからも養育家庭を選べるようになっています。
これは、子どもと家庭の相性を考え、「誰でもいい」というより「この子と家族になりたい」
という気持ちがある方がうまくいくという考えに基づいています。
日本ではまだ受け入れづらい仕組みかもしれませんが、
一生の伴侶をWebサイトで探す時代、新しい家族をWebサイトで探すことも当たり前になるかもしれません。
参考:Adopt US Kids
アメリカの里親制度が目指す場所
アメリカの里親制度が目指すものは、
子どもたちの安全
ウェルビーイング
パーマネンシー
の3つです。
まずは子どもたちが安心して生活し、成長するためには、安全が最も重要です。
次にウェルビーイング、日本語で言うと幸せや健やかな成長です。
これは心と体の健康、自立するための教育と能力に分けられます。
小さな子どもたちは大人が思っている以上に敏感であり、心と体を安定させるためには、
施設よりも家庭環境が重要とされています。
子どもが学校に通えているか、セラピーが必要ではないかなど、健康的に過ごせるようにバックアップ体制をしっかりと構築しています。
ここでは、「自立」がキーワードになります。
どの子どもも将来的には自立して、自分で生計を立てていかなければなりません。
そのためには、教育を受け、能力を身につける必要があります。
子どもたちが教育を受けられる環境を整え、
自立できるようサポートすることの重要性が認識されています。
最後に「パーマネンシー」の考え方があります。
これは日本語で「永久性」という意味です。
子どもたちが一つの里親のもとで生活し続けられるように、または知人などできるだけ近い人たちのもとで生活できるようにする考え方です。
2000年以前のアメリカでは、里親が頻繁に変わり、
子どもたちが一箇所に定住できないという問題がありました。
この状況は子どもたちにとって大変なストレスとなり、里親を見つける際にはできるだけ関係の近い人たちを優先しています。
このようにアメリカでは、子どもの負担をできるだけ減らし、将来自立できるようにする考え方のもと、里親制度が運営されています。
その中でも、一番のポイントは子どもたちの権利を尊重している点です。
その権利を尊重するために、里親探しに真剣に取り組み、お金をかけて広告を出し、
積極的に活動を行っています。
アメリカでもまだ里親制度には問題がありますが、積極的な活動が徐々に成果を上げています。
日本の里親制度との比較
日本財団によると、日本には生みの親と離れて暮らす子どもが約4万5,000人いて、
そのうち8割以上が乳児院や児童養護施設で生活を送っています。
これは、
先進諸国と比べても圧倒的に多いです。
里親だけで言えば、
アメリカは77%であるのに対し、
日本が18%(日本は2016年、他国は2010年頃の数値)にとどまっている状況です。
日本では里親の数が非常に少ない状況です。
これは、
里親制度が浸透しにくい日本の文化や、
人々の認識が十分に広まっていないことが原因とされています。
そもそも児童施設にいる子どもたちがどのような背景を持っているのか、
どんな生活を送っているのか、その後どのように成長していくのか、
といった情報が十分に共有されていません。
子どもを取り巻く法律や、そこで働く職員たちの実態も明るみに出ていないため、問題が共有されず、
暖かい家庭環境を得られていない子どもたちが多く存在しています。
参考:日本財団ジャーナル「潜在的な里親候補者は100万世帯!なぜ、里親・養子縁組制度が日本に普及しないのか?」
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