つくば香風寮の里親支援活動は、平成27年に茨城県から里親支援機関と認定され里親支援専門相談員を配置したところから開始しました。
当初は国から示されている里親支援専門相談員の役割を果たす活動ができるか、大きな不安がありました。施設内では一人業務であり、同じように他の施設で活動している里親支援専門相談員も手探り状態で仕事をしていたからです。
また全国の研修会に参加しても里親支援専門相談員の業務については施設、地域によっても異なり、示されている役割と実際にできる業務との隔たりは大きなものがありました。

　そのような中で始まった業務ですが、先ず私が行ったことは自分自身が「里親」を知ることでした。正直「里親とは何か」、自分は何も知っていなかったからです。
幸い同敷地内の乳児院には一足早く里親支援専門相談員が配置されていたので、地域の里親会の集まりにスムーズに参加することができました。
里親会は快く新任の自分を受け入れてくれて、その後も様々な集まりに参加していくことで、多くの里親さんと接し、「里親とは何か」を知る機会を多く持つことができました。

　里親さんとの関係性が深まってくると、話す内容も自分の家庭での養育の話が増えてきました。その多くは委託児の養育についての悩みでした。
その話を聞き自分の施設職員としての経験を踏まえた養育の話をさせて頂くうちに、自分の社会的養護の子どもたちと接してきた養育経験や、ペアレントトレーナーとしての適切な養育技術のノウハウがここで活きるのではないかと感じるようになりました。
そこが私の里親支援の柱としている『養育相談』スタートでした。

　当初から『養育相談』の多くは思春期の里子の養育についてでした。
（不登校支援）や（ネットリテラシー）、また自立を控える子どもへの奨学金の案内を中心にした「自立支援」等、施設職員として培ってきた経験や知識が活きました。
時には施設心理士としての経験から（カウンセリング）的な関わりを持つこと、心理検査の結果の解釈についてのサポートもさせて頂きました。
これらが必ずしも悩みのすべてを解決してきたわけではありませんが、寄り添う姿勢は崩さずに関わり、里親さんの養育を支持していくことを継続することで、少しずつ里親さんからの信頼も頂けるようになったと思います。『養育相談』は今も継続して行っています。

繋がりのない里親さんに繋がれる場を

　『養育相談』活動と並行して、地域の里親活動を活発にしていくことも意識しました。継続して里親会には参加しつつ、それとは別に施設主催の里親サロンの運営にも着手しました。
もちろん、里親支援専門相談員の役割として里親サロンの運営は示されていましたが、一番の目的は「繋がりのない里親さんに繋がれる場を提供したい」という思いでした。
私が里親支援に携わり始めた当初は、マイノリティなイメージが強かった里親制度の中で、なかなか周りに自分が里親であること話せず人知れず里子の養育で悩んでいる方、委託後は支援を受けず孤立している方が少なからずいました。ただでさえ家庭という閉鎖的な空間の中での養育は虐待のリスクも高くなりますし、そのような環境が継続的に続くと真実告知を控えている方々にとっては、よりその機会を失っていく恐れもあります。
その為どの支援機関でもよいので「どこかに繋がっていて欲しい」、そう願い自分たちの里親サロン（さくら）もそんな場所になりたいという思いが強くありました。

　里親サロン（さくら）は毎月定例で行っています。毎月の集まりは小規模ですが、半年に一度開催している交流会には多くの里親さんが仲間とのつながりを目的に集まって下さります。
里親さんのサポートを大きな役割としている私たちですが、このサロンを通して里親さん同士のつながりそのものが里親さんの一番の力になっているのではないかとも感じます。ママ友ができた方、人生の先輩のような方と出会えた方もいますし、子ども同士では幼馴染のような関係の子どももいます。
里親サロン（さくら）を立ち上げて４年が経ちましたが、このような里親さん同士がつながっていく場として、今後も継続していきたいと考えています。