子育て支援・虐待防止を目的に、訪問型の子育て支援「養育支援」「食の支援」「里親家庭支援」を行っているＮＰＯ法人バディチームの３回目、里親家庭支援についてです。

2008年＿里親さんとの出会い

バディチームが設立して間もない頃、里親会の事務局にお伺いしました。
訪問型の子育て支援が里親さん家庭にも少しは役に立つのでは、というくらいの軽い気持ちで伺いましたが、里親さんからは「実は里親が大変。里親がかなり疲れて参ってしまっていて心配している。何とかしていきたい。」と。
このままでは里親から里子への虐待の心配さえあるというお話を伺った際には、本当にとても驚いたことを今でもよく覚えています。

当時、私の「里親さん」のイメージは、子育ての大ベテランで悩むことなどはあまり無く、里親さんのもとに子どもたちがたどり着けば、全てが解決される、というようなものでしたが、里親さんがそのようなスーパーマンではないということは、間もなくわかってきました。

2009年＿里親支援モデル事業（社会福祉法人社会福祉事業研究開発基金助成事業）

里親さんとの出会いを機に、モデル事業として保育、家事支援を主とした訪問型支援を始めることになりました。当初は、支援の導入に際して「支援は使ってみたいけど専業主婦なので申し訳ないので」「先輩里親さんに怒られる」という声も時々聞かれていましたが、最近では里親さんも様々な支援、社会資源を利用されている方もみられますので、時代はかわってきているように感じます。
そして、家庭に伺う中で「里子の子育てについての悩み」「里子と実子の関係の難しさ」「児童相談所担当者への不満」「小学校での2分の１成人式への対応についての悩み」等々・・・。多岐にわたり、様々な面でとても大変な状況があることが少しずつ見えてきました。

2010年＿里親家庭ファミリーサポート事業（日本財団助成事業）

その後、この支援を継続する上で「里親さんのファミリーサポート版」として、里親さんの自己負担金を800円として、里親さんと支援者が直接のやりとりをするかたちをモデル事業として行いましたが、自己負担金の発生ということでの利用減少、ボランティアでの運営管理の難しさもあり、里親ファミサポはその年で終了となりました。

〇2012年＿

この年に「杉並事件」という里親家庭で3歳の女の子が亡くなるという事件が起こり、里親さんたちがこれは他人事ではないと立ち上がり声をあげたことを機に、東京都での里親支援事業がたくさん増えました。そのひとつとして育児家事援助者派遣という訪問型の支援が始まり、今日の継続に至っています。

この事業は、里親さんの負担軽減を目的としています。

【対象】希望する委託中の養育家庭（ファミリーホーム除く）、専門養育家庭、親族里親及び養子縁組里親が対象。
【利用時間】１家庭あたり年間24時間を上限として里親支援専門相談員に申し込みます。
【支援内容】保育、送迎、家事支援。
　・保育はご自宅や近くの公園、児童館、地域子育て支援ｾﾝﾀｰ等。
　・送迎は保育園、幼稚園、学校、習い事への送り迎え。
　・家事は委託後まもない時期や養育者の入院等の状況でのご利用があります。

支援内容の保育では、里親さんが用事を済ませるための時間の確保目的から、里父さん里母さんと二人だけで久しぶりにゆっくり食事に行くために、という積極的なリフレッシュ利用まで様々です。送迎支援も同様ですが、他の兄弟児の行事の対応のためにということもよくあります。

家事支援では、里親さんの体調不良時や入院期間中に調理や掃除のお手伝い。また、委託後間もない子どもが里親さんの身体から離れず家事が出来ないという時期に夕食作りの依頼というようなこともあります。

育児家事援助者派遣は、コロナ禍でもニーズはあり、昨年の緊急事態宣言下の5月に一時中断した以外は、広場型の支援が使えない時期にも継続してご家庭に伺っています。
育児家事の援助は特別に専門的なことではない普通の子育て支援です。ファミサポやレスパイト等、他の支援とうまく組み合わせて利用されている里親さんもみられます。


そして、私たちバディチームの援助者はこの事業を通じて里親さんのことを知り、身近に感じ、少しずつ理解を深める機会を得ることができました。里親さんを増やすだけではなく、里親さんの理解者や支援者を社会に増やしていくことも大切です。

また、里親さんは社会的養育の子どもたちの支援者でもあり、地域で子育てをする当事者でもあるといえます。里親さんが地域での子育て支援を十分に受けられることも必要です。

育児家事援助者派遣事業は、まだまだ運営上の課題もあり、そして支援内容には展望もありますが、東京都以外でも全国的にも育児家事援助者派遣のような、地域で地域住民による「里親さんの子育て支援」の取り組みが広がっていくことを期待しています。