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「全ての子どもに『生かしの道』を!」 をテーマに、名古屋市で「児童虐待防止活動」 「不登校・ひきこもりの支援」を行っています青少年養育支援センター陽氣会です。
第3回は、これからの里親には、里親の里子たちへの愛情や養育に対する熱い思いの他に、「養育のコツ」を学んでいく必要性があることを私の体験も含めてお話していきたいと思います。
第1回目のコラムの自己紹介の下りにも書きましたが、私は両親の代から30年以上もの間、親子二代にわたり養育里親(現在はファミリーホーム)をさせてもらってきました。
私がまだ子どもだった頃、我が家に委託されてくる里子たちのほとんどは、いわゆる非行系の児童でした。ボンタン、剃り込み、改造バイク、タバコ、アンパン・・・etc. 今では「死語」になっているような言葉が日常的にポンポンと飛び交っていたように思います。
ところが、ここ15年くらい前から、委託されてくる里子に被虐待児童が多くなってきたという実感があります。それと同時に、関係性構築や日常的なコミュニケーションを取るのが少し難しい里子が増えてきたなあと感じることが多くなってきました。
下記の総務省の調査からも分かるように、児童養護施設と比較するとまだ半数程度とはいえ、近年、里親家庭に被虐待児童や何らかの障害を持った児童が委託されることが増えてきているようです。
一般家庭である里親宅において、そうした障害や被虐待経験のある里子を養育する中でさまざまな困難な状況が生まれくるのは容易に想像ができます。特別な研修を受けた「専門里親」とはいえども、その養育の困難さは決して例外ではありません。
平成29年に厚労省が取りまとめた「新しい社会養育的ビジョン」(新ビジョン)により、里親委託が推進されていく流れが明確となり、今後さらに私達の里親宅にケアニードの高い里子が委託されるケースが増加することは間違いありません。
下記の浜松医科大学 杉山登志郎教授による被虐待児童の併存症に関する研究でも、被虐待児童の半数以上(53.1%)に発達障害がみられ、その他にもさまざまな障害が高い割合で見られたと報告されています。
今後、私たち里親には上記のようなさまざまな障害をもった被虐待児童が里親委託されることが増加することが避けられない以上、多くのエラーが生じてくる前に、何らかの備えをしていく必要があります。
そうした中で、これからさらに強く求められるのが、そうしたケアニードの高い里子に対する私たち里親の「養育力の向上」です。
もちろん、里子の養育には里親の里子への深い愛情や里親活動に対する熱い情熱が必須です。里子や里親活動に対する私達里親の愛情や熱い思いがあるからこそ、里親という児童福祉が成り立っているのです。しかし、愛情や情熱など思いさえあれば、必ず里親養育がうまくいくというわけでありません。もしかしたら、思いだけでは上手くいかないことの方が多いのかもしれません。
前回も述べましたが、里子の養育に限らず、「子育て」というものは、ある意味「料理」と似ています。「料理」はいくら作り手に愛情や「美味しいものをつくりたい」という熱い思いがあったとしても、作り手が料理を作る上での(最低限の)コツを知らなければ、おそらく美味しいものを作ることはできません。思いだけでは、良い結果は伴わないのです。
作り方の手順などのレシピや隠し味、食材の生かし方、温度管理など、ちょっとした料理のコツを知っていると美味しい料理を作ることができます。
それと同じで、子どもを養育する上で、特に今後多くなっていくのであろうケアニードの高い里子たちを養育するためには、里親は里親養育に最低限必要な基礎的な知識や養育のコツ(技術)を学ぶ必要があるのです。
前述したように、養育の中ではさまざまな局面や場面があり、褒めたり、叱ったり、問題を予防したり、時にはグッと感情をコントロールしたりなど、里親にはその場その場で適切な対応が求められます。たとえ里子が問題を起こしたからといって、ただ大きな声で怒鳴ったりするばかりでは、思いが空回りするばかりで、決して効果のある養育にはなりません。
かつては「(自分の)子どもを育てた経験さえあれば、誰でも里親養育はできますよ」などといった言葉を里親のリクルート活動の時によく耳にしました。しかし、現在、里親養育がそんな甘いものではないことは誰もが認識しているところです。
もし、あなたが自動車教習所に通ったこともなく、無免許であるのにもかかわらず、ある日突然、車を与えられて「今日からこの車を運転しなさい」と言われたらどうでしょう。あなたが事故を起こす可能性は非常に高いのではないでしょうか。
しかし、自動車よりもっともっと扱うことが難しい子ども、しかもさまざまなケアを必要とする里子を「養育」しなければならない私達里親は、里親登録をするにあたり「登録前研修」という非常に短い期間の研修を受ける程度で里親活動に入っていくのです。
つまり、多くの里親が無免許運転に近いような状態で、さまざま複雑な背景、障害を抱えている里子の養育に突入していかなければならないのです。その結果、養育において事故や重大な問題が起きる可能性が高くなってしまうのも当然のことと言えましょう。事実、たいへん残念なことではありますが、既に私達里親の中にも、そうした問題を抱えた里子を養育する中で「不適切な養育」が行われたとされるケースも少なからず出てきています。
だからこそ、今後の里親活動に大切なことは、里親が養育に必要なコツや技術、知識を継続的に学べる機会をさらに拡充すべきだと強く思います。また養育研究会や更新研修などの折に、ぜひ、里親の養育力の向上に役立つような研修会の開催を推進して頂きたいと思っています。
当会の開発した暴力や脅しに頼らない子育て法である「SS式イライラしない子育て法®」(Communicative Parenting Approach 通称:CPA)は、そうした子育てのコツ(養育技術)を学びたいという里親さん方には、たいへん効果的で実践しやすいものになっております。
コロナ禍において、オンラインによる講座も多数開催しております。各地の里親会でぜひ「イライラしない子育て講座」を開催し、里親の養育力向上にご活用頂けたらと思います。
青少年養育支援センター「陽氣会」
子育て・お子さんの不登校・引きこもりなどに悩む親御さん方への支援を目的とし、「生かしの道」をキーワードに活動しています。
団体概要
団体名 | 青少年養育支援センター「陽氣会」 |
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代表 | 杉江健二 |
主な活動 | ① 青少年育成活動:空手教室、和太鼓教室、フラダンス教室の開設・運営 ② 不登校・ひきこもりの支援:家庭訪問型支援、フリースクールの運営 ③ 親支援:子育て支援プログラム「SS式イライラしない子育て法®」の開発、啓蒙、普及。「イライラしない子育て講座」の開催。CPAトレーナーの養成。 |
連絡先 | 青少年養育支援センター陽氣会 事務局 住 所:愛知県名古屋市昭和区折戸町5-33 電 話:052-751-4055 メール:info@youkikai.net |
ホームページ | https://youkikai.net/ |
https://www.facebook.com/youkikai555 |
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