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子どもと共に日々を過ごし、子どもの心の揺れを受け止めながら心身ともに健やかな生活を送れるよう生活を支えていく里親。里親の子どもへの理解と関わりについて、地域の関連機関との連携についても考えていきました。
今回の講演者
長田 淳子 氏
二葉乳児院フォスタリングチーム統括責任者・副施設長
目次
講演内容① 「子どもと里親家庭」
「里親さんにお願いしたいこと」として長田氏は以下の4つをあげておられました。
・子どもと共に日々を過ごし、子どもの心の揺れを受け止めながら心身ともに健やかな生活を送れるよう生活を支えていくこと
・子どもにとって変わらない場所と特別な人(家族)を基盤に成長できること
・子どもらしさと個々の成長発達を大切にしながら、その子どもなりのペースで自立に向けて支え、共に暮らしていくこと
・子どもの何気ない日々の喜怒哀楽を、一緒に響き合ってくれる人がいること
ただ、一緒に生活する里親さんにとってはすごく大変なこともあって、苦しくなることも悩むこともあるので、その時に長田氏は「フォスタリング機関が何ができるといいか」ということを一緒に考えて取り組んでおられるそうです。
子どもは日々成長し、一つクリアになっても次の課題があり、ゴールがありません。
特効薬というものはありません。
子どもたちの成長と混乱と揺れに安定して対応しているのが里親さんです。
フォスタリング機関でもあり、ご自身も養育里親である長田氏が里親さんにお伝えしていることはどんなことでしょう。
「里親養育とは?」ということをあげてくださいました。
・子どものニーズに耳を傾けることのできる存在になる
・子どもの持ち物と記憶を大切にすること
・子どもの記録と養育の振り返り
・他者に助言や協力を求めることの重要性
・子どものモデルになること
・子どもの強みと自分の強みをたくさん見つけること
・子どものレジリエンス(自己回復力)を信じること
・自分の限界を知ること
・守秘義務と周囲との情報共有
・不適切な養育の回避、虐待予防
■受け入れる子どもへの説明と子どもの想い
里親家庭にきた経緯など子どもへの説明は、担当の福祉士さん、里親さんからされる場合もあります。それをどんな風に話したのか、里親さんとしてどんな説明の仕方をしたらいいかという確認はとても大切です。
まとめて説明するというよりは、子どもたちは日々ちょっとした不安に対応してくれる人がいるということがとても大事だそうです。
では「里親さんに何でもかんでも質問してくることがいいことなんだ!」というと、そうではなく、質問しない子もいます。ただ、何かあった時には回答してくれる存在なんだと子どもが知っていくことは安心感につながるので、不安定な時期については、たくさん声をかけてたくさん強みを言葉にしてほしいとのことでした。
■子どもの持ち物と思いで名前の取り扱い
長田氏は、持ち物の保管についても里親さんにお伝えをしているそうです。
サイズアウトして小さくなったお洋服も、だれからもらったものか、乳児院から引き継いでるものなのか、実家庭から持ってきているものか、などの背景もあり、子どもにとってとても大切なものです。
将来、子どもがそれを見た時に「いる、いらない」と判断をすることはあると思いますが、大人が判断するのではなくて、持ってきたものについてはライフストリーワークであったり、自身を振り返る時に大切なものでもあるので、保管をお願いしているそうです。
名前の由来についても、実親さんが教えてくださる場合には入所の時に聞いているそうです。時には名前の由来が実親さんの好きなアニメのキャラクターであったり「そんなに考えて名前をつけていない」とおっしゃることもあるそうです。
それでも子どもにとっては誰かが名前をつけてくれたということがすごく大事なので必ず確認するそうです。
特別養子縁組成立後に名前を変更しようと考える場合も、どうして名前を変更したのか、どんな思いがあるのかということを子どもにしっかり伝えていくことが大切とのことです。
■学校など周囲との関わりと情報共有
長田氏自身も里親として子どもを保育園に通わせていて、先生に子どものこと、里親のことをどんな風に伝えるのがいいのかというのを日々悩んでいて、「答えはわからない」と仰っていました。
保護者会で言った後の反応もどんなふうに周りに伝わって言ってるのか目に見えない部分があり、不安になることもあるといいます。
「「絶対に伝えなきゃいけない」ということではなくて、子どもにとって必要かどうかを考えながら判断してほしい。それを里親さんから伝えることが難しい時にはフォスタリング機関として代わりに、時には一緒に伝えられるといいなと思っています」とのことでした。
■医療や子育て支援との連携
周囲にどんな地域子育て支援があるのか、関係が取れそうな、里親に理解のある医療機関があるのかも大事なことです。一方で、協力関係をしていきたい、関係機関として支援をしてもらいたいと思った時に、里親について理解がしてもらえなかったり、逆に過度に慎重になられたりすると「里親さんとしては分かってもらってないな」と思って里親さん自身の気持ちが落ち込むこともあるといいます。
「地域で「里親さんのこと知っているよ。だから何かあったら話をしてね」という方がどれだけ周囲にいるかは重要で、これから地域で里親さんのことを知ってもらうことがとても大事になると思います」
講演内容② 「社会的養護を必要とする子ども」
■複数の喪失体験をしている子どもたち
「乳児院に来る子どもたちは小さいから覚えてないんじゃないか」と言われる方もいますが、子どもたちを受け入れてる中では、やはり乳幼児であってもたくさんの喪失体験を感じていると長田氏はいいます。
実親さんから離れる、生活の場を変える、そして次の場所に行く・・・。
喪失体験を重ねていく中で、ひとつずつ、少しずつクリアしていかないと子どもたちはとても不安になっていると感じているそうです。
「乳幼児期、小学生であっても「自分は何に揺れていて混乱しているのか」というのを子どもたち自身は分かりません。そして、分からない子どもの揺れを見ている大人も全く分からないこともあります。そこが手探りになるということが里親さんの家で子どもを育てる難しさにつながることも多いと感じます」
■不安定な家庭状況の影響を受けている子どもたち
虐待、ネグレクトなど不適切な養育環境や状況に混乱していることもあります。
■愛着アタッチメント、心身の障害や発達の偏り
凸凹がある子たちもたくさんいます。
その凸凹は元々持っている一つかもしれないですが、それまでの家庭環境、養育環境の中で凸凹を生じている子たちもいます。
里親家庭で育てる中で課題になるところをあげてくださいました。
■不適切なコミュニケーションスキルの取得
子どもにとってはそれが不適切だとは感じていないようです。
子どものそれまでの生活の中では必要だったコミュニケーションスキルであったり、獲得してきたものもあります。子どものせいでもなく、対応可能なこともたくさんあります。
子どもが獲得したコミュニケーションは、養育する側としては難しかったり困惑することもたくさんあるといいます。
長田氏が里親さんの所に話を聞きに行くと「ピタッとくるかと思ったら来なかったりとか、すごくくっついて離れられなくなったりとか、その日その日で変化が大きいこともあって、困惑している」という里親さんも多いようです。
また、その日その日で大きく変わっていく子どもに対して「この子は二重人格多重人格じゃないか」など、元々の子どもの性格が見えなくて「こういう風にすればいいんだ!」と自信の持てる子育ての方法が見つかりにくいということもあるといいます。
■トラウマやフラッシュバック
乳幼児などフラッシュバックが出ても分かりづらいところもありますしすぐにフラッシュバックが出たものについての語れない時もあるので、何のきっかけで起きているのかということが見えにくいこともあるそうです。
■自己肯定感の低さ
「どうせ僕なんて」「どうせ私なんて」いう風に、言葉として出していけるのはそれは強さかもしれませんが、自信のなさというのを抱えているこどもたちが多いといいます。
■感情コントロールの難しさと抑制
フラッシュバックや、今まで感情を言葉にしてこれなかったり、見てもらえなかった子ども達にとって、里親家庭って本当に安心安全に繋がっていて、自分のことを知ろうとしてくれるということがあります。
それは子どもをとってかけがえのないものではありますが、逆に言うと今まで経験したことのないような自分の感情を揺さぶられる行動でもあるので、最初の頃は混乱が大きく出てしまうこともあり、安心すればするほど不安になる(不安定な信頼感)子どもたちたくさんいるそうです。
「この人は安心できる人だ、頼れるんだ」と思えば思うほど「またいなくなっちゃうんじゃないか」という風に考える子もいるので、子ども自身も距離感の取り方がよく分からなくて、近づいてみたり離れてみたり怒りをぶつけてみたりっていうことをするのかもしれません。
それは「何年か経てば落ち着きます」というものではなくて、その都度その都度、その子が成長発達の中で獲得する喪失感や、人との関係性の中で不安になることで、ぶり返すこともたくさんあるそうです。「もう何にも経ってるのに落ち着かない」ということもいくらでも生じる可能性があるといいます。
長田氏も、思春期と言われる時期や自立に向けた時期の子ども達の混乱、揺れをたくさん見てきているそうです。
「小さい頃の子育てで失敗した」ということではなくて、逆に安心安全だからこそ今出せているものもたくさんあります。他の外的な要因で引き出されたり引き戻されることもあるので、やはり子どもがいろんな不安定さを出した時に里親さんと確認しながら何が家庭の中でできるか、何を関係機関にお願いすのるかという風に考えていくところがすごく大事だと仰っていました。
■喪失体験や不安と依存、心身へのダメージ
虐待を受けた時には体に傷を持っている子もいますし、心の中でトラウマとして持ってる子たちもいます。
■様々な発達の課題
乳児院ではおなかの中にいる時の情報いないお子さんが多く、どんな風に実母さんが生活されてきたのか、受診検診の度にどんな様子だったのかなどわからないことが多い。
乳児院に来る子どもたちの多くは妊婦検診を受けてこなかったご家庭も多いので、おなかの中の時の環境や状況が分からなくて、その時にダメージを受けているのでは、と感じる子どもたちもいるそうです。
よく耳にする「試し行動」という言葉。
長田氏はあまり使わないようにしているそうです。
里親さんの家に行く時にも「試し行動がありますよ」という言い方は極力控えるようにしているそうです。それはなぜかというと、子どもたちは試してやろうとは思っていないのに、試し行動という言葉だけが先行して行くと里親さんは子どもに試されてるんじゃないか、見られてるんじゃないかと感じると言います。そんな風に感じなくていいのになと思うことがたくさんあるそうです。
里親さんにも、子どもを迎え入れる前の今まで生活してきた家庭様式、人との関わり方、コミュニケーションの方法があり、子どもと一緒に暮らす中ではピース合わせが必要になってきます。
子どもたちは生活環境が落ち着けば落ち着くほど出てくるいろんな怒りや悲しみを持っているので「最初の3か月はとても大変です」と里親さんに伝えているそうです。
また、安心安全であればあるほど表出する怒りや悲しみ、逆に固まってしまう、表出できない自分の感情を言葉にしづらく見えてこないという子どもたちもいます。
子どもたちは「今このモヤモヤが何なのか」ということを言語化することがわからなかったり、辛くてその怒りを暴力で出すこともあります。
落ち着けば落ち着くほど、一番関係の取れている人から噛む子たちもいるそうです
長田氏は「里親さんには全部受け止めてくださいということではなく、どんな風にすればいいのか、子どもたちが安心安全を獲得するために何ができるかを里親さんと一緒に考えたい」という気持ちで日々里親さんをサポートされているそうです。
長く養育していると子どもたちは安定するということもないといいます。
もちろん安定はするけれど、子どもたちは成長発達の中で自分にまつわる情報を見返して、不安になったり、知りたいと思うこともあり、実際さんとの関係や里親家庭にいることの意味について振り返って揺れることもあるそうです。
子どもの葛藤、子どもを受け入れるにあたってのご家族、里親さん側の葛藤を整理していく必要があるといいます。
里親というのは公的養育です。しかし一方で自分の生活の中で子どもを受け入れて一緒に暮らしていくっていうことが時には矛盾と葛藤になることももちろんあります。
長田氏は実子も含めて一緒に育てている中で「育て方に違いがありますか?」と質問されることも多いそうです。「違いはないな」と思う一方で配慮はしていると言います。
里親として受け入れているという部分での配慮として、日々の生活から視点を一旦里親養育(公的養育)というところに向けなければいけないということをあげられていました。
そのことは、里親さんにとって負担にもなり、それが里親さんにとってのしんどさに繋がることも多いのかもしれません。
里親になった理由と決心に喪失感をもたれる里親さんも多くいるそうです。
子育てがうまくいかない時や、子どもの行動で混乱した時に「自分が子育てをすることになろうと思った事は間違ってたんじゃないか」と語られる方が多いといいます。
長田氏が「そうじゃないですよ」と言っても、その時の混乱や今感じていることを払拭することはできないので、その混乱や今思ったことについて耳を傾けるしかないこともたくさんあるそうです。
「子どもの家族となって、子どもと一緒に暮らそうと思ってくださった方に対して、心から感謝しています。同時にすごいなーと思うこともたくさんあります。里親さんが、里親なったことに対してネガティブになるときにはできるだけ支えて、私たちが感じている里親さんの強みを伝えつつ、一緒に一歩を踏み出せるといいなと思っています」と長田氏はおっしゃっていました。さらに、「里親さんの中には、実子さんができなかったっていうところで喪失感を感じて、特別養子縁組里親に関心を持って登録したという方も多くいます。いろいろと考えて決心して里親になったのだと思いますが、だからといって「里親さんになると決めたのはあなただからがんばりなさい」という話ではなくて、逆に実子さんを望むことができなかったという中での喪失感や悲しみが里親さんになって子どもを養育する中で最初の頃は何回も顔を出すこともあると思うので、そこも触れて支えていけることができるといいな、と思います」と仰っていました。
子どもを支える人を支える。その様子が伝わります。
■周囲の理解と凸凹
ニュースでも里親について取り上げられるようになったので、理解度は進んできましたが、理解度に凸凹があることが里親さんやその地域で生活することも取ってしんどくなることもたくさんあります。
講演内容③ 「子どもに必要なこと里親に必要なこと」
長田氏がトレーナーをしているホスタリングチェンジプログラムの中の一つプログラムとして「どう感じますか」というワークショップがあるそうです。
子どもたちは根っこからひっこ抜かれて、違う土地に 植え替えられた木のようなもので、自分がそこに行きたいって思ったわけではない子が多くて、ここの土地でひとまず成長してくださいという風に、大人側の判断で植え替えられた木のようなものとしてイメージします。
里親さんに「ではその木にとってどんなことが必要でしょうか?」と聞くと、適度な栄養、栄養と言ってもどの栄養が一番合うか工夫しないとだめですね、太陽は必要?どこでこの木が今まで生活していてどんな風に太陽を浴びてきたのかによっては暑すぎることもあるから時には日よけが必要だよね。など、子どもにとってどんなニーズがあって、どんな風に支えられ支えてあげると、子どもが安心安全にこの場所で根っこを貼ることができるかということを深めていきます。
根っこが根付けば、その木なりの葉っぱをつけたり、時には動物の拠り所となることができたり・・・。
ただ、しっかり根が張れていないと、ちょっとした風でも大きく揺れることもあるので、どうやって新しい場所でその子がその子なりに根をはるかを支えることが要になります。
25歳から30歳になったぐらいにどれぐらい落ち着くかというところで、子どもがどれだけのサポートや支援を里親さんから受けてきたかが見えることもたくさんあるそうです。
「子どもと里親さんだけで頑張れることではないので、特別視ではなく、地域がどんな風にその家族を見ていけるか一緒に家族を支えていけるかが大事。一緒に寄り添いながらできることが何かっていうところが必要で、里親さん自身が安心安全基地を作って、そして子どものモデルになっていくっていうことがすごく大事かなと思います。」
続けて、「子どもの想い」として、子どもたちが語ってくれた一部分を紹介してくださいました。
■喪失体験
これまでの環境や養育者との違い、愛してくれる人は去っていく
■安全基地
いつまでここにいられるのかな、いい子じゃないと見捨てられるかななどの漠然とした不安を感じている
■実親さんの存在についての感情・想像
どんな人だろうかとかどうして自分を手放したのか、
実親さんと里親さんの間に入る中で、里親さんに実親さんのことを伝えていいのか、里親さんのことをどんな風に実親に伝えていいのか葛藤したり、どんな説明がいいのかを悩む子たちもいる。逆にサバサバしてあんまり言わない子もいる。
■周囲との違いへの気付きと自分らしさの形成
無条件で受け入れてくれる人の存在を土台に子どもたちがこれまでの自分をして今置かれてる状況を理解して人生の連続性を取り戻して未来へ向かう力を得るプロセスがとても大事。里親さんの家で生活してる子どもたちはこれが出来るということが強み。
あいまいな喪失とは、その喪失自体があいまいで不確実な状況のことを指し、はっきりしないまま残って解決することも決着を見ることも不可能な喪失体験というふうに定義されているそうです。
実親さんはいるらしい、今兄弟がいるのかどうかも定かじゃない、いるらしいけど見たこともないし声を聞いたこともないし想像しかないっていう子どもたちの中で、なぜ自分がその実親から離れることになったのかということの理解が自分の中で決着がつきにくいことがたくさんあります。
だからこそ、子どもの成長発達やニーズに合わせて子どもにありのままを伝えていくことの大切さを里親さんにお伝えすることが多いそうです。
伝える側も不確実でちゃんとした情報が手に入ってないことももちろんありますが、情報が少ないながらにも子どものニーズに合わせて自分の特別な存在である人たちが、丁寧に説明しようとするということがとても大事なことだといいます。
そして、あいまいな喪失の状況では自分は誰なのかということがわかりにくくなり、自分の アイデンティティや役割が脅かされるという風に言われています。
「自分のこれまでも自分がコントロールできていなかった、であればこれからもコントロールできないじゃないか自分が自分の決定で進むことができないじゃないか」と不安になる子もいます。また中には「自分が一番自分の情報を知らない」と感じている子もいます。
フォスタリング機関、児童相談所、里親さんが知っている情報よりも、自分が一番自分のことを知らない。「なぜここに来たか、どういう経緯でこうなったか、何が動いているのかがわからない」という風に感じる子たちもいて、自分の役割の喪失、自分の知らないところで物事が動いてるというような不安感を感じて、日々の揺れであったり、ちょっとした人の言動や動きで揺らされることもあるので、こういったことを理解しながら子どもたちにどうやって関わっていけばいいのか工夫していく必要があるのが里親養育で大切であり難しいところだといいます。
では子どもの喪失に対してどんなことができるのでしょうか。
喪失体験は一人ひとり違います、兄弟によっても違います。反応もそれぞれ違って、怒りを持つこともあります。
子どものニーズに耳を傾け、声を聞くこと、どんな言葉でも語れる時に語れる場所を提供していくことが大切です。
一方で、養育している里親さんにも喪失体験はあって、子どもの悲しみや揺れに響きあうことがあります。そして相乗効果として強め合うことも場合によってはあるかもしれません。響き合うからこそ、丁寧に一緒に整理をしていくことができるのかもしれません。子どもは誠実な大人を必要として、サポートされることから学びを得ますしモデルともなります。
逆境に置かれても耐え抜き、プラスの力に変えて新しいエネルギーを発揮する、絶えず再生していく成長力とプラスの感情ともなった健康的な機能になります。
それは情報提供と人との適切な繋がりを通すことで、機能をより強めることが可能になります。
ペコペコにへこんだボールだと、そのボールが弾むのは難しい。逆にそのボールの許容範囲を超えるほど空気を入れると弾みすぎてしまって、ベストではない。でも、周りの支えや特別な環境の中で自分なりにいい具合に空気を入れることは可能です。
家族が増えるということは、ベテランの里親さんであっても家族全体の変化やバランスの変化があります。
「これってどういうことだろう」「何が起きてるんだろう」もちろん里親さんも揺れます。
そんな時はどうしたらいいのでしょうか。
長田氏は「その都度整理をすることが必要になってきますので、是非そういう時には担当の支援員に声をかけていただいて一緒に取り組めるといいと思います。残念ながらこうすればいいですよという特効薬はありません。私たちは里親さんの話に耳を傾けつつ、どんな方法があるか、他の人だったら例えばこういうことがありましたというような情報提供をする中で里親さんが自分なりに出来ることを見つけていただけると良いかなと思っています」と答えてくださいました。
里親さんだけでなく、ご家族、同居されている方、ご親族、一緒に暮らしているペットも揺れます。そして、仕事や趣味やストレス解消法にも変化が求められることもあります。
子どもを受け入れてから「ちょっとストレス溜まってきたな」とか「ちょっと混乱してるなー」という時には「どんなストレス解消法がありそうか」「自分のこの混乱は何か」というところを振り返る必要があるそうです。
「その部分は是非フォスタリング機関を担当している団体や里親支援専門相談員さん、信頼のおける方にモヤモヤを語りながら整理をするということをしてほしいです。」
そして、セルフケアです。
「子どもを養育ということはいえば、共感レベルがすごく上がることもあります。共感的に子どもを養育しよう、子どものニーズを捉えよう、と思えば思うほど心身への負担は大きくなりますので、ぜひ最初の特に3ヶ月から1年の間は自分が疲れていないか、混乱していないか感じていただきながら養育をすすめてもらえるといいかなと思っています」
地域や社会とのつながりとして、自分にとっての応援マップに応援してくれる人をたくさん書いてもらえるといいということも教えていただきました。
「日々の関わりの中であったり、家族であってもいいと思います。最低5人は必要ですとお伝えしているそうです。
「もし、いないようであれば私たちスタッフや里親支援に関わるスタッフも応援マップに入れてもらえるように私たちも頑張りたいなと思っています」
心強いですね。
二葉・子どもと里親サポートステーションとして取り組んでいることについても触れてくださいました。
真実告知のお手伝い、子どもの話を聞くこと、乳児院で里親家庭生活してる子どもたちのボランティアの受け入れ、里親さん、養親さん子ども達が集まる場所となる、養親さんや子どもの相談、子どもの自立支援など養育者と子どもたちを支える取り組みがたくさんあります。
「自分の応援団、自分を支えてくださる方が5人いますか?」という話をしましたが、ぜひ応援マップを書いていただいて子どもとみなさんの応援マップにたくさん名前があるといいなと思います。
私たち自身も乗せてもらえるといいなと思っています。
そして多くの応援団を持つことができるように願っています。それは子どものモデルにもなります。
決して「葛藤や混乱がもあったら人の助けを得なければいけない」ということではなくて、様々な工夫や対応の中で里親さんが子育てをしていくということは、子どもにとって最大のモデルになると長田氏は言います。
「私たちは子どもと家族の応援団になりたいと思っています。民間フォスタリング機関はまだまだ手探りで事業内容は自身も大きく変遷していきますし、まだできてないことがたくさんありますが、一緒に何ができるのかどこまでできるのかをたくさんの声を聞きながら諦めずチャレンジしていきたいです」と締めくくられました。
■参考サイト
フォスタリングチェンジ・プログラム
子どもと里親のためのサポートハンドブック
https://www.shakyo.or.jp/tsuite/jigyo/research/20190513_sien_book2.pdf
参加者からいただいた質問
ADHDの高校生の女の子の暴言がすさまじい。メンタルクリニックに行っているが効果はわからない
日々の生活の中で思春期の子どもの変化は見えにくいですよね。
「あなたがどれだけ反抗してもあなたは大切な存在なんだ」と伝え続けること、外の資源を上手に活用しながらつきあっていくことが大切ですね。
実親が長期に渡って行方不明の場合、こどものパーマネンシー保障はどうなるのか、自動相談所は特別養子縁組の申立はできるのか
近年は特別養子縁組に積極的になっていると感じています。
行方不明であってもご親族とかその方の年齢など他に同意をしてくれる方の背景で違ってきますが、可能性もふくめて児童相談所と相談していくのはひとつの方法です。
実親の家にいたい妹、里親家庭にいたい姉で対立している
兄妹間でも、どれだけ実親さんと生活してきたのか、社会的養護の元にきた年齢によっても違いますね。
子どもそれぞれの思いを聞いていく必要がありますね。
面会交流も、子どもそれぞれに変えていくことが必要かもしれません。
里子の家庭復帰について
自立支援事業としてフォスタリング機関が担っています。
措置解除後10年間、子どもたちの相談に乗れるようにしていますが、自治体によっても違うかもしれません。
まだはじまったばかりで手探りな状態です。
コーディネーター相澤先生よりコメント
里親さんが養育に悩みを抱えるのは当然で、子どもを養育するのは本当に大変なことです。
ただ、子どもの不安定さに影響されて里親さんが不安定になると、さらに子どもは不安定になります。
子育てを楽しめるといいけれど里親さんがいかに悩みを共有して、少しでも情報を得て養育をつなげていくことが大切です。
応援マップに書ける仲間が増えるといいですね。
主催オンライン里親会
「トラウマの理解と対応」
2月6日10:00-12:00講師西澤 哲 氏
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