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今回の講演者
橋本 達昌 氏
全国児童家庭支援センター協議会 会長
社会的養育総合支援センター 一陽 統括所長
目次
講演内容① 里親となるきっかけ
橋本氏は、児童養護施設の運営に関わり、ボランティアとして子どもたちと関わるようになったきっかけを話してくださいました。
施設にいた、スポーツが得意な子が、高校に入学して1年で学校を辞めてしまい、施設のルールで働くことになった時、橋本さんは里親登録をして、その子を自分の家に迎え入れました。
しかし、橋本さんは昼間働いていたため、橋本さんのお母様が24時間その子の面倒を見ていました。それでも、その子には問題行動があり、半年で里親としての子育てがうまくいかなくなり(里親不調)、里親としての役割を終えることになったそうです。
現在、児童家庭支援センターのセンター長を務めている橋本さんは、過去の里親経験から「里親は本当に大変だ」と強く感じていて、「続けて里親をされている方々を心から尊敬している」と話されました。
講演内容②全国の児童家庭支援センター
全国には170の児童家庭支援センターがあり、この3年間で1割から1.5割ほど増えています。特に九州地方で増える傾向が強く、乳児院や児童養護施設だけでなく、NPO法人や障がい者施設が児童家庭支援センターを作るケースも増えています。
児童家庭支援センターは1997年の児童福祉法改正で制度化されました。基本的には、ソーシャルワーカー2人と心理士1人が配置されることになっており、相談支援の仕事をしています。また、児童発達支援センターや子ども食堂がない地域では、児童家庭支援センターが発達の相談や学習支援など、子どもの様々なニーズに対応しています。
全国児童家庭支援センター協議会には、全国の170の児童家庭支援センターが集まっており、国(官)と民間(民)が協力する体制を作ったり、児童養護施設と里親との連携を強めたりすることが重要な役割となっています。児童家庭支援センターは困った時に頼れる場所(受け皿)としての役割を担っており、特に浜松市や福岡市の児童家庭支援センターが注目されています。
これまで、児童養護施設と里親の関係はあまり密接ではありませんでしたが、今後は施設と里親がもっと連携し、協力していくことが求められています。橋本氏は、児家センターの運営や具体的な取り組み例を紹介しながら、児家センターの役割と重要性を強調されていました。
講演内容③全国子ども家庭養育支援研究会
講演では、全国子ども家庭養育支援研究会についても触れられました。相澤氏が会長を務め、橋本氏が事務局長を務めています。
全国子ども家庭養育支援研究会は、全国里親会との相互支援協定書を結んでおり、地域ネットワークセミナーを年1回、全国を巡っています。
全国子ども家庭養育支援研究会の目的は、地域のコミュニティの中にネットワークを作ることです。これにより、子どもや家庭の支援がより効果的に行われることが期待されています。今後の活動や取り組みについても説明されました。
講演内容④ファミリーホームと児童家庭支援センターのこれらの歩み
里親・ファミリーホームと児童家庭支援センター(児家セン)が、これからどのように協力していくか、いくつかの取り組みが紹介されました。簡単にまとめると、以下のようになります。
橋本氏は、「小さな支援の場(リソース)が全国にたくさんあることで、子どもたちの選択肢が増え、支援する側も大変な時に助け合える環境が整う」と話しました。里親さん、ファミリーホーム、自立援助ホーム、そして児家センが増えることは、「社会的養護」から「社会的養育」への発展に不可欠だと説明しました。「養護」は施設などで保護するイメージが強いのに対し、「養育」は家庭的な環境で育むイメージが強く、より子どもたちの成長に寄り添った支援と言えます。
さらに、昨年10月にできた「労働者協同組合法」についても説明がありました。この法律によって、例えば里親さんが3人集まって、ファミリーホームや自立援助ホームを運営したいと思った時に、「労働者協同組合」という法人を設立できるようになりました。
「労働者協同組合」では、働く人全員が経営者となり、みんなで意見を出し合い、仕事のやり方を決めることができます。橋本さんは、このような「労働者協同組合」が、小さな支援の場にとって必要だと述べました。
用語説明:「労働者協同組合法」(厚生労働省「知りたい!労働者協同組合法」より引用)
この法律の基本的な考え方は、
というものです。つまり、働く人みんなが主体となって事業を運営していく仕組みです。
講演内容講演内容⑤児童家庭支援センターの取り組み
児童家庭支援センター(児家セン)の事業について、具体的な例を挙げて分かりやすく説明します。ここでは、2つの児家センの取り組みが紹介されました。
【児童家庭支援センター・児童養護施設 一陽 の取り組み】
「自分たちの職場は自分たちで作ろう」という考えから始まった組織で、職員たちが話し合いを重ね、より良い支援ができるように新しい事業を展開しているそうです。特に注目すべき事業は2つです。
① ブックスタート補完事業(未受診親子への家庭訪問事業)
児童養護施設に入所する子どもは、虐待などが深刻化しているケースが多いという現状から、「できるだけ早く、助けを必要としている子どもたちを見つけてケアしたい」という職員の願いから生まれた事業です。
越前市では、生後5ヶ月の子どもを対象に健診が行われ、その際に絵本がプレゼントされます。しかし、健診を受けるのは全体の7割で、3割は受けていません。そこで、児家セン「一陽」は、健診を受けていない親に「絵本を取りに来てください」と伝えます。すると、そのうちの2.5割(全体の25%の2.5割なので、約6.25%)が絵本を取りに来ます。
それでも来ない残りの5%の家庭に対して、「一陽」のスタッフが家庭訪問を行います。訪問することで、家がゴミ屋敷になっていたり、親の様子がおかしかったりするのを発見し、市に報告することで、虐待の早期発見につなげています。
② 施設退所児童自立サポート事業(施設退所青年への訪問型生活支援)
児童養護施設を退所した後、連絡が取れなくなってしまうケースが多いという現状から、「できるだけ長く、退所した子どもたちとつながっていたい」という思いから生まれた事業です。
施設を出た後、「一陽」がアパートを借り、そこで退所した子どもたちが生活を始めます。スタッフが朝と夜に訪問して、生活のサポートなどを行います。
【大分県 児童家庭支援センター 光の園子ども家庭センター の取り組み】
・短期預かり事業の取り組み
ショートステイ(短期間の預かり)、里親レスパイト支援(里親さんの休息のための預かり)、一時保護などの事業を通して、地域の子どもを1日に平均3人ほど預かっています。これらの事業を行うための専用の場所を用意して支援を行っています。
特に印象的だったのは、兄弟が別々の里親さんと施設に預けられていたケースで、この里親レスパイト支援を通して、兄弟が一緒に過ごす時間を作ることができた例です。
これらの取り組みは、地域の子どもたちや家庭を支援し、「社会的養育」の発展に貢献しています。
橋本さんは最後に「これからの児童家庭センターは、相談を受けるだけでなく、子どもを預かる機能も重要になる」と述べ、講座を終えました。
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