© ONE LOVE All Rights reserved.
今回は福岡市子ども家庭支援センター「SOS子どもの村」センター長 松崎佳子氏に、「里親を支援する、里親が支援する」と題して講演頂きました。
今回の講演者
松崎 佳子氏
福岡市子ども家庭支援センター「SOS子どもの村」 センター長
講演内容① 「SOS子どもの村」の活動について
松崎氏がセンター長を務める「SOS子どもの村」は福岡県福岡市にある子ども家庭支援センターです。現在、福岡市の社会的養護を必要とする子どもの数は約300人、登録里親が277人となっております。里親への委託率は60%となっていますが、はじめから高い委託率を実現できたわけではなかったそうです。
2005年ごろの、里親への委託率はわずか6.9%。
そこで、2006年に「SOS子どもの村」として法人を立ち上げ、2010年に子どもと里親をつなぐ「子どもの村福岡」が設立されました。
「子どもの村福岡」では里親のサポートも大切にしているそうです。
家事や養育のお手伝いをするファミリーアシスタント制度を導入し、里親が休息できるようサポートしたり、ソーシャルワーカーや子どもの村のスタッフを交えて情報共有をし、チーム養育を実現させています。
松崎氏は、里親、子ども家庭支援センターの両方の活動を通じて「なんとか子どもが安心・安全に過ごせる場を作りたい」と言う思いで尽力されています。
講演内容② 里親との家庭養育の中でどんなことが起こるのか
子どもたちと里親の関係は日々様々なことが起こります。
松崎氏は、里親が事前にどんなことが起こりうるのか知っておくことが大切ですと話され、具体的な事例をご紹介くださいました。
まず1つ目は「忠誠葛藤」です。
子どもは、実の親と里親、両方の親との関わりを持つ中で、「どちらかの親と関わりを持つことは、もう一方の親を裏切ってしまうのではないか」という葛藤を持ちます。 実の親と交流した後、里親宅で夜泣きが激しくなるという形で現れることもあります。 松崎氏は、「そういうときでも辛抱強く見守っていくことで、すこしずつ子どもたちの安心感が育まれます。」と話していました。
2つ目に、里親との養育の中で安心してくると、子どもたちの意識に過去の体験記憶が出てくることがあります。子どもたちには実の親との辛い記憶も楽しい記憶も残っています。中には「自分が悪かったから、親と離れてしまった」と思い込んでいる子どもたちもいます。
そんなときに里親ができることとして松崎氏は、「あなたは悪くない、とまず伝えること。そして、子どもの無理のない範囲で体験について振り返るサポートをすることが必要」と話していました。
また、子どもたちは、本当の感情を出すことに困難を抱えている場合が多いです。
大人が信じられなくて安心して心を開けない状態になっています。そのため怒っているように見えたり、逆に何もないように見せたり、問題行動に発展しているなど、さまざまな形であらわれます。
松崎氏は「里親にとっては、非常に大変な場面ですが、このような可能性を知識として持っておき、ゆっくりと、気長に、完全を求めない、1人で頑張らない、他者の協力を求めてください。里親が困った時には『困った』と言いやすい支援機関も必要」と話していました。
講演内容③ 里親による地域子育てとは?
里親を地域で支える
里親委託率が増えてきたとはいえ、まだ課題があると松崎氏は話しました。
ひとつは、実の親の里親委託の抵抗感が強いという側面、そして受入側も、養子縁組はしたいが里親になりたい人は少ないという現状です。
里親制度は、家庭で養育するので一見すると養子縁組のような私的な形に見えていますが、そうではなく公的養育だ、と松崎氏は話しました。
この認識を向上させるには、より里親の専門性や資質を向上させていくサポートやしくみが必要だと話していました。
以前、里親のコンピテンシーについて松崎氏が調査をしたところ、約80%の方が「里親になって自分についての新たな気づきがあった」と回答があったそうです。このように里親の経験をしながら、気づきによって量向上につながる面もあるようです。
また、そんな里親を支えているのは友人、近隣の方たちという回答も多かったそうで、これはまさに地域子育てにつながっていきます。
松崎氏が取り組んでいる里親研修「フォスタリングチェンジプログラム」の様子についてもご紹介いただきました。
このプログラムは、少人数で1回3時間となっており、ロールプレイなどを通して里親自身で問題解決を導き出していくプログラムです。
皆さん、積極的に参加され、ポジティブな視点で取り組んでおられるそうです。
参加した里親からは「問題行動の時のやり取りがシンプルになって、疲労感が減りました。」「子どもの思いに気づくことがたくさんあった。」などの感想があり、プログラムを通して里親のサポートができていると実感しているそうです。
ショートステイの取組
また、松崎氏はショートステイの取組もご紹介くださいました。
ショートステイは、長期間の里親委託ではなく1泊2日や1週間という短期での受け入れの事です。福岡市ではこの利用が伸びています。
利用される家族は、1人親が大半で、預ける理由は仕事や育児疲れなどです。
受け入れる里親も「長期では難しいけれど、短期であれば可能」ということでイベントブースでの情報をきっかけに申し込んでくださる方が増えている状況です。
ショートステイがあることによって、子ども自身も無理のないペースで地域の家庭で見てもらうことができる。また利用側の、少しだけサポートしてほしいというニーズに対応することができるシステムになっていると松崎氏は話しました。
このようなシステムの中では、まさに里親は地域の人として地域の中で子どもをサポートする公的支援と言えることができます。
最後に松崎氏は「SOS子どもの村」のビジョンをご紹介くださいました。
「子どもが1人で育つことがない社会を目指す。」
里親養育を通して私たちも目指していきたいですね。
“心の支え”となるコミュニティ
ONE LOVE オンライン里親会は、里親が抱える日々のつらさやしんどさ、喜びを共有できるコミュニティとしてすべての里親をサポートします。
オンライン里親会は、無料で参加いただけます
メンバー登録をするはじめて知った里親の方へ
ONE LOVE オンライン里親会とは里親や次世代の子どもを支えたい方へ
寄付で支える