© ONE LOVE All Rights reserved.
今回は、永田勝利さんに、里子・ケアリーバーの経験を踏まえて「里親さんに伝えたいメッセージ」というテーマでお話しいただきました。
今回の講演者
永田 勝利氏
NPO法人 青少年の自立を支える会運営「月の家」アルバイト
講演内容① 里親家庭での経験
永田さんは、母親、兄と3人暮らしでしたが、小学2年生の時に、お母さまが交通事故で記憶喪失になったことをきっかけに里親に預けられることになりました。
しかし里親家庭では虐待がありました。
家でのお手伝いを強要され、できていないと里母がヒステリックにモノを投げて暴れるという状況でした。永田さんは、「習い事をさせてもらったり、里親の実の子が兄のように永田さんにやさしく接してくれたことはありがたかった」と話していましたが、虐待がエスカレートし、小学5年生の終わり頃に限界を迎え、逃げ出して一次保護されることになりました。
その後はファミリーホーム「はなの家」へ移りました。
ファミリーホームで、話を最後まで聞いてくれる大人の存在があることで安心を取り戻した永田さん。
ここでは暴力をふるう大人がいない…。
少しの事でもほめてもらえる…。
最初は、「大人が怖い。それは自分のせいだから自分も嫌い」という人間不信の気持ちでいっぱいだった永田さんですが、ファミリーホームの中で安心の場を獲得することができました。
そして同時にそれは、永田さんにとって人生の大きな転機となりました。
永田さんは「本当に尊敬できる大人に出会い、自分も彼らのようになりたい、そんな目標ができたことが、私にとって大きなことだった」と話していました。
講演内容② 当事者活動での経験
永田さんの活動
永田さんは、里子経験者、ケアリーバーとして当事者活動を積極的に行っています。
今回は現在の活動についてご紹介いただきました。
1つ目は、「ぴあ活動」です。朝日新聞厚生文化事業団の児童養護施設進学応援金を受けている奨学生が、後輩たちに向けて奨学金などの情報発信や社会的な改善を目指して活動しており、永田さんもその一員です。
ぴあブック、ぴあラジオ、ぴあ応援フェスなど、様々な媒体で情報発信を行っています。
ぴあラジオはこちらから
(外部のサイトに遷移します)
2つ目は、フォスターユースの会です。里親大会や地方の里研修会を訪問して、当事者の経験を話しています。里子の集いは、年に2回ほど開催していて、関東甲信越の里子を中心に現在交流会を行っているそうです。
3つ目は、経験を話すことです。地域内を中心に、社会的用語に関する研修や里親大会、研究大会にて当事者としての経験を話しています。
4つ目は、子どもの居場所でのアルバイトです。親子包括支援を必要とする家庭で生活している子どもたちと関わっています。
なぜ当事者活動をしているのか
永田さんが活動を続ける理由は「同じような境遇で生活をしている人たちの役に立ちたい」という気持ちです。
そのきっかけとなったのがファミリーホームで出会ったバザーだと話します。
バザーでは同じ境遇の子どもたちと仲良くなったことが、大きな支えになりました。そして永田さん自身が大人になるにつれ、バザーを運営している大人たちの存在も見えてくるようになり、いつか自分も同じように人の役に立ちたいと思ったそうです。
永田さんは活動の中での印象的なエピソードも話してくれました。
中学2年生の男の子が、「僕は何も悪いことをしていないのに、どうして親から離され、保護されなければいけないの?」と言ったそうです。その子は牢屋に入ってしまった気持だったのです。そのとき、永田さんは「上辺だけの回答ならいくらでも言える。でもこの子の気持ちを思うと、何も答えられなかった」と話していました。
また、一方で「当事者活動は本当に里子に需要があるのですか?」というご意見を頂いたことをきっかけに、活動の意義についても自問自答している毎日だと永田さんは話していました。現時点で答えは出ていないからこそ、やってみようという気持ちで、今も頑張っていらっしゃいます。
講演内容③ 里親に伝えたいこと
永田さんは、里親へ「いつも本当にありがとうございます。」というメッセージを伝えました。里親が子どもたちのために考えて頑張ってくれている様子を見て、永田さんも、「これから自分も頑張っていきたい」という気持ちになっているそうです。
続いて、里子の視点から「里親にお願いしたいこと」として3つの貴重なアドバイスをいただきました。
1つ目は、里親さん同士、里子同士が交流できる場所を積極的に活用してつながりを大切にしてほしい、ということです。
2つ目は、里子の声を聴いてほしいということです。里子は自分の意見を言うことすら難しい状況ですが、待ってくれているだけでもうれしいと話していました。
具体的な例として、永田さんがファミリーホームでお世話になったホーム長のエピソードを話してくれました。
ホーム長は、永田さんに「「話がある」ということだけをまず教えて欲しい」と伝えてくれました。なかなか自分の気持ちが言語化できなくてまごまごしていても、待ってくれていたそうです。「いつでもどんな時間でもいいよ」というホーム長の姿勢に、永田さんは救われたと話していました。
3つ目は、継続した関係性を築いて欲しいということです。永田さんは「措置解除や家庭復帰で離れてしまった子どもたちに対しても、できる限り、定期的に連絡を取るなどして気にかけてあげて欲しい。それが子どもたちにとっても大切にされていると感じる瞬間ですから。」と話していました。
“心の支え”となるコミュニティ
ONE LOVE オンライン里親会は、里親が抱える日々のつらさやしんどさ、喜びを共有できるコミュニティとしてすべての里親をサポートします。
オンライン里親会は、無料で参加いただけます
メンバー登録をするはじめて知った里親の方へ
ONE LOVE オンライン里親会とは里親や次世代の子どもを支えたい方へ
寄付で支える