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今回の講演者

川村 亮太郎 (かわむら りょうたろう)氏
社会的養護経験者、一般社団法人マスターピース 事務局
社会的養護経験
13歳から20歳まで(措置延長を含む)児童養護施設で生活。
資格
大学在学中に社会福祉士資格を取得。
職歴
現在
一般社団法人マスターピース 事務局にて、親を頼りづらい若者への居場所提供、食料配送、住居サポート(シェアハウス等)に従事している。
目次
社会的養護体験の振り返り:一時保護所と児童養護施設
川村氏は自身の経験を振り返り、当時子どもがどのような不安を抱き、どのような支援を求めていたかを語られました。

【イラスト1】信頼関係の基盤となる「聴く姿勢」
13歳の時、突然の一時保護を経験されました。子どもにとっての「突然」は、大人が想像する以上の不安をもたらします。
施設での生活に移ってからも、「子どもの意見」が置き去りにされる場面は続きました。
意見を聞いてもらえない無力感と失望
川村氏の経験の中で特に印象的だったのは、大学生時代、地域小規模施設に移ってからの出来事です。
当時、ある職員との関係に悩み、心理的な圧迫を感じていました。川村氏は勇気を出して、新しく担当になった児童相談所のケースワーカーに相談を持ちかけました。
「まだ、その職員本人や他の人には言わないでほしい」
そう約束して相談したにもかかわらず、その内容は施設側に筒抜けになっていました。後日行われた話し合いの場で、ケースワーカーが報告していたことが発覚したのです。
「声を上げても救われない」「大人は約束を守らない」「相談しても無駄だ」という深い失望(学習性無力感)を植え付けました。虐待から守られるはずの場所で、信頼を裏切られるという「二次被害」とも言える体験は、子どもの心に深い傷を残します。
信頼できる大人とは?当事者の視点から
失望を経験する一方で、川村氏は「信頼できる大人」にも出会ってきました。当事者が心を開ける支援者には、共通する姿勢があります。
子どもの意見表明を阻む「四つの壁」
子どもが自分の意見を言えない背景には、四つの障壁が存在すると川村氏は指摘します。里親や支援者は、この壁を理解し取り除く努力が必要です。

【イラスト2】子どもを取り囲む四つの壁と希望の光
アドボカシー実践への提言:専門性とハートのバランス
子どもの権利擁護(アドボカシー)を実践するために、私たち大人はどうあるべきでしょうか。
知識や技術といった「専門性」は重要ですが、それだけでは子どもの心には届きません。川村氏は、「ハート(人間性・共感力)」とのバランスが不可欠だと強調します。子どもの痛みを感じ、共に悩み、人として関わる姿勢があって初めて、専門性が活きてきます。
明日からの支援に活かせる指針として、「ABC」のキーワードが提示されました。
質疑応答
Q. 子どもが「言いたくない」と黙っている時、どう関わればいいですか?
無理に聞き出そうとせず、「言いたくないんだね」という気持ちを受け止めることが大切です。沈黙も一つの意見表明です。「いつでも聞く準備があるよ」というメッセージを伝えながら、一緒に遊んだり、何気ない時間を共有したりすることで、「機会の壁」と「心理的な壁」を少しずつ低くしていくことが遠回りのようで一番の近道です。
Q. スマホやゲームのルール作りで、子どもの意見と親の考えが対立した場合は?
頭ごなしに禁止するのではなく、まず子どもの言い分(なぜそれをしたいのか)をしっかり聞くことです。その上で、親側の懸念(健康や安全など)も正直に伝え、「どうすればお互いが納得できるか」を一緒に考えるプロセスを踏んでください。一方的なルールの押し付けは、アドボカシーの観点からは避けるべきです。
Q. 過去に子どもとの約束を破ってしまったことがあるかもしれません。関係修復は可能ですか?
可能です。まずは誠実に謝ることが大切です。「あの時は守れなくてごめんね」と大人から弱さを見せることで、子どもは「この人は正直だ」と再評価してくれることがあります。川村氏の言う「リセットして接する」姿勢を大人側も持ち、今日からまた新しい信頼関係を積み上げていくことが重要です。
まとめ

【イラスト3】信頼でつながる子どもたちと支援者
今回のセミナーでは、当事者である川村氏の生の声を通じて、子どもの視点から見た「支援」と「権利擁護」のあり方が浮き彫りになりました。
子どもたちは、常に大人たちの背中を見ています。専門的な知識を持つこと以上に、「約束を守る」「話を最後まで聞く」「一人の人間として尊重する」という当たり前のことを、誠実に積み重ねていくことが、子どもの声を聴くための第一歩です。
「アドボカシー」という言葉を難しく捉えず、まずは目の前の子どもの隣に座り、「あなたの味方だよ」というメッセージを伝え続けることから始めていきましょう。
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