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今回の講演者

黒川 紗妃氏
株式会社良心塾 広報 / 『結笑和』女将
25歳、3人の子どもを持つ母。
2歳の時に保護され、児童相談所・里親・施設を経験。12歳で家出をし、14歳で初逮捕、15歳で少年院に入所(在院期間が延長し約1年半を過ごす)。
少年院で良心塾塾長(黒川氏)と出会ったことで人生が大きく変わる。
現在は居酒屋『結笑和』の女将や「株式会社良心塾」の広報として、再犯防止や社会復帰支援に携わっている。
目次
講演内容① 少年院・刑務所が映す社会の現実〜当事者データから考える〜
黒川氏は冒頭、「少年院や刑務所に行く人はどんな人だと思いますか?」と参加者に問いかけられました。昔と今の少年院の中にいる人には大きな違いがあるといいます。

また、2015年から2019年にかけて、虐待を受けた少年少女の数が増加しているデータを挙げ、「やったことは加害者になってしまうが、幼少期の彼らも被害者だったのではないか」という重要な視点を提示されました。
講演内容② 境界知能と愛着形成の問題
少年院や刑務所で多いとされるのが「境界知能(IQ70〜85)」の方々です。少年院に入ると4人に3人が境界知能に該当すると言われています。黒川氏は、一見普通に見えるが 、ケーキを3等分に切れない、リストカットが深いなどの特徴について説明されました。
さらに、虐待やネグレクトにより起きやすい障害として以下のものを挙げられました:
特に女子少年院では、2人に1人が境界性パーソナリティ障害と診断されるほどであり、愛着障害に至ってはほぼ全員と言えるほどの割合に上るとのことです。
「幼少期に強い衝撃や虐待、暴言を受けると前頭葉の成長がストップし、脳が変わってしまう。0歳から6歳の間に愛情が形成されていないと愛着障害になりやすく、その生きづらさが犯罪や非行に走ってしまう原因になっている」
と、背景にある深い課題を指摘されました。

講演内容③黒川紗妃氏の当事者経験〜転落・転機・そして立ち直り〜
黒川氏自身も、2歳の頃に保護され、児童相談所や里親、施設を転々とした経験を持っています。「お母さんが帰ってきていいよと言うたびに家に帰るが、結局同じことの繰り返しだった」と振り返ります。
12歳で家出し、行き着いた居場所は夜の街しかありませんでした。そこで悪い大人たちの中で「初めて認められた」と勘違いし、言いなりになっていたらそれが犯罪につながってしまったと語られました。14歳で初逮捕、15歳で少年院に入所します。
少年院に入っても社会への恨みつらみしかなく、帰る場所がなかったため、8か月の予定が1年半にまで延びました。全国の施設に受け入れを断られ、舞鶴の里親さんも書類上の都合で引き受けができなかったため、行く場所なく少年院にとどまっていた時に現れたのが、良心塾の黒川塾長でした。
「『騙されたと思ってついてきて』という言葉に、行く場所もないのでついていきました」
そこから今まで知らなかった人たちと出会い、仕事の楽しさを知り、思い切り笑えるようになったといいます。同じく良心塾で頑張っていた旦那さんと出会い、3人の子どもの母となりました。1人目の長男は多くの人に見守られて出産し、2人目・3人目は自宅出産(自然分娩)を選択されたそうです。
しかし、平穏な日々はある日突然崩れることになります。旦那さんが不在となる状況が生じ、急にシングルマザーとして3人の子どもを育てていかなければならなくなりました。
いろいろな人に頭を下げながら奔走し、子どもたちが旦那さんと一時的に過ごせる時間を作ることもできました。しかし再び同じ状況が繰り返され、現在も子どもたちと一緒に旦那さんの帰りを待っています。
そんな中、長男が保育園から持って帰ってきた「流れ星のお願い」の手紙が、黒川氏を大きく動かしました。他の子が「消防士になりたい」「歌手になりたい」と書く中、長男は「パパが帰ってきますように」と書いていたのです。
「一度も私の前で泣かなかった長男が、心の中でずっとパパを待っていたことに気づきました。子どもたちのためにもう一回頑張りたいと思い、黒川塾長に相談しました」
この決意が、現在の黒川氏の『結笑和』の女将と、株式会社良心塾の広報としての活動につながっています。
講演内容④株式会社良心塾の活動〜再犯防止のための三本柱〜
良心塾は平成25年の設立(旧ヒューマンハーバー大阪)以来、「誰もが明るい未来に向かって歩める、加害者・被害者も増えない社会を実現する」を経営目的に活動しています。犯罪数自体は減っているものの、再犯率は上がっており、令和5年の再犯者数は86,099人・再犯者率47.0%(ピーク:令和2年の49.1%)に達しています(法務省 法務総合研究所より)。
再犯する人の特徴として、刑務所に入っている人の大半が無職であり、少年院・刑務所から5年未満で大多数が戻ってしまうというデータがあります。一方で、再犯しなかった人の共通点として、「自分を必要としてくれる人がいた」「頼りになる人がいた」「裏切りたくない人がいた」「仕事があった」などが挙げられます。
良心塾では、再犯防止のために以下の「三本柱」で支援を行っています:
1. 教育(心のスポンジ):問題解決能力を伸ばすプログラム。愚痴や不平不満しか言わなかった人がアドバイスができるようになり、これを受けた約80名が5年で再犯率ゼロを達成しています。
2. 住居::大阪・野田の商店街の中に「良心塾」という寮を構え、生活基盤を提供しています(現在女性2名受け入れ中)。
3. 就労(おせっかい居酒屋『結笑和(ゆにわ)』):美容師など技術習得に時間がかかる職種ではなく、誰でも挑戦できる居酒屋を開店。お金のない若者には無料で食事を提供し、少年院出身者も働いています。
講演内容⑤ 関わってきた子どもたちの事例
黒川氏は、良心塾が実際に関わってきた子どもたちの過酷な現状についても語られました。
Mちゃん(26歳)生後2週間で「子供育てれない、可愛いと思えない、いらない」と連絡があり、塾長と共に支援。生後4か月で良心塾の寮に入ったが、結局育てられないと施設入所へ。現在男の子の行方は不明、Mちゃんは別の場所で働いている。
Kちゃん(21歳):構ってほしい行動から、2日に1回救急車に運ばれる状態(10円玉を食べたり、ハイターを飲もうとするなど)。施設では1か月も経たずに追い出され、現在は大きな精神科病院で両手両足に手錠をかけられた部屋に入っている。生きづらさを抱えながらも頑張って生きている。
みっちゃん(男性):少年院に4年半入所し、引き受け拒否され帰る場所がなかった。母親が死んだ時に嬉しくて笑いをこらえるのに必死だったと語るほど、過酷な軟禁状態にあった。しかし彼が描く220匹の猫の絵には「愛してるよ」「大好き」「遊ぼうよ」「仲間に入れて」と書かれている。現在は刑務所に7〜8年入る状況にある。
講演内容⑥ 日本の子どもたちを取り巻く現状と、支援のかたち
黒川氏は、日本が「心の貧困・課題先進国」になってしまっていると指摘し、以下のデータを示されました。
「これだけの人が生き方や働き方で迷子になって、人生に悩んでいると言われています」と、社会全体の構造的な課題として捉えることの重要性を訴えられました。
良心塾は国からの支援を一切受けておらず、皆さんの支援金で施設運営費を賄っています。支援のかたちは以下があります:
1.フルーツハーブティー定期購入(準備中):黒川紗妃の良心塾再建プロジェクトの一環として、コラボ商品(フルーツハーブティー)を販売。
2.良心塾マンスリーサポーター:月々1000円〜の社会貢献。
3.良心塾サブスク「ハッピー結笑和」:月々11,000円〜。シングルマザー・シングルファザーや子どもたちが居酒屋『結笑和』に来て食べたいものを無料で食べられる活動にも充てられます。
補足:黒川塾長より(社会の受け皿として)
講演の後半では、良心塾の黒川塾長から補足のお話がありました。塾長は、罪を犯した若者の多くが幼少期につらい経験をしており、帰る場所やそもそも育った家庭がない子もいると指摘します。
「仕事についていないと更生は難しい。彼らは社会に必ず戻ってくる。社会の受け皿として、出所後をどう見守るかが重要です」
負の連鎖を止めるための支援の必要性を訴えつつ、「里親・養子縁組が増えれば良心塾の活動は減ると確信している」と、里親の役割への強い期待を示されました。そして、「血の繋がりよりも、どれだけ長い時間自分のことを認めてくれる人と過ごせたかが大事」と強調されました。
質疑応答
Q1. 出所後は自殺願望が強かったとのことでしたが、今はどうですか?
今でも「ない」とは言い切れません。朝は生きたいと思うけど夜は死にたいというのの繰り返しです。でも、子どもを産んだ時に初めて「生きたいな」と思うようになりました。子どもがいるから今もなんとかやれています。
Q2. とても愛情を注いでくれる里親さんのところにいたとの話でしたが、どういう経緯で実親さんのところに戻ったのですか?
(黒川紗妃氏)小6の卒業式の4か月前に急に児童相談所の人が来て、「お母さんが帰ってきていいよと言ってるけどどうする?」と言われました。当時10歳で、嬉しくて家に帰りましたが、また同じことの繰り返しでした。里親さんとは今でも連絡先を知っていて、悪いことをしている間も連絡を取ってくれていました。里親さんが爪の切り方や箸の持ち方を教えてくれた唯一の存在です。踏みとどまれているのはその里親さんのおかげもあります。
Q3. (黒川塾長への質問)紗妃さんを養子縁組した理由はなんですか?
(黒川塾長)紗妃さんと表面的な信頼関係はできても、根っこの不安(また見捨てられるのでは、また裏切られるのでは)が根深く、5年経ってもはなかなかお試し行動がなくなりませんでした。100人以上の子どもと関わり、雇用した子は35人、深く関わった子は20人いますが、その中でも紗妃さんは最も根深い愛着形成の問題がありました。籍を入れることで安心感につながればと思い、養子縁組をしました。
まとめ
今回のセミナーでは、少年院経験者であり現在は3人の母として、また株式会社良心塾の広報として再犯防止に取り組む黒川紗妃氏の生の声を聴くことができました。
「被害者」として育ち、「加害者」と呼ばれた子どもたちのバックグラウンドには、虐待・愛情不足・居場所のなさがあります。「帰る場所」と「必要としてくれる人」の存在が、再犯防止の大きな鍵であることが深く伝わりました。
質疑応答でも語られたように、里親が「最後のストッパー」として果たしている役割の大きさも改めて浮き彫りになりました。子どもたちが被害者にも加害者にもならない社会を、皆で一緒に作っていきたいという思いを新たにするセミナーでした。
講演の中では、マザー・テレサの言葉「愛の反対は憎しみではなく、無関心」、そしてキング牧師の言葉「この変革の時代の最大の悲劇は、悪人の執拗な暴言ではなく、善人の恐ろしいまでの沈黙と無関心である」が引用されました。これらの言葉を胸に、私たちにできることを共に考え、行動していくことが求められています。
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