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子どもアドボカシーとは子どもの声を聴き権利を守ること。
力が弱く社会に届きにくい子どもの声をしっかり聴いて、子どものマイクになる大人がいてくれたらどんなに助けになることでしょう。
子ども時代を里親家庭、児童自立支援施設、児童養護施設で過ごした川瀬氏をお迎えして「子どもの声」について一緒に考えていきました。
今回の講演者
川瀬 信一 氏
千葉県生実学校分教室教諭
一般社団法人子どもの声からはじめよう代表理事
内閣官房こども政策の推進に係る有識者会議構成員
子ども時代を里親家庭、児童自立支援施設、児童養護施設で過ごす。現在はかつて生活していた施設に勤める中学校教員。一般社団法人子どもの声からはじめよう代表。
内閣官房「こども政策の推進に係る有識者会議」構成員
目次
講演内容① 「里親家庭での経験」
母から父へのDV、家の中がゴミだらけでゲームセンターが居場所だったという川瀬氏の小学生時代。
4年生、6年生の時に2度保護され、2回目の保護のときに児童相談所の職員さんから「里親さんがいい?それとも施設がいい?」と聞かれ、どんなところで暮らしたいかも丁寧に聴いてくれたといいます。
そして川瀬氏は里親を選択します。
それは、ゴミだらけの家にこのまま住んでいたらどうなってしまうんだろう。という不安からこの家を出たいという思いがあったといいます。
重ねて、仲良くしていた友達は自分に「家に遊びにおいでよ」と誘ってくれるのに、その友達を「俺んち来いよ」と言えない。ゴミだらけの家に友達を呼べない。いつか友達を家に誘って一緒に遊びたいと望んでいた。だから施設ではなく、普通の家っぽいところがいいという思いから、里親さんを選んだということでした。
里親さんは川瀬氏を家族の一員として迎えようと役割を与えます。
ガーデニング、雨戸を閉めるというお手伝いを頼んでくれました。
「これくらいのことだったらできそう」と思って引き受けたのに、簡単そうにみえたお手伝いができなかったそうです。
それは、ガーデニングがはじめて経験だったこと、雨戸のある暮らしを体験したことがなかったということだけではありませんでした。
今までの暮らしの中で、何かを習慣付けて行動するという生活習慣が身についていなかったからでした。
せっかく里親さんが自分に頼んでくれたのに、簡単そうなのことができなくて、すごく自信を失ったそうです。
出来て当たり前のことができない。迷惑をかけたくないと思っているのに迷惑をかけてしまう。そんな状態でした。
里親さんにお世話になることをきっかけに学校を転校した川瀬氏は、まったく友達がおらず、学校でも居場所がありません。周りのみんなは友達付き合いができているのに・・・。
そんな時、ふと周りを見ると、みんなが持っている、当時流行っていたシャープペンシルに気づきます。
このシャープペンシルがほしい。みんなと共通のものを持っていたら仲間になれるかもしれない。そう思っても、できて当たり前のことができずに迷惑をかけている自分は里親さんに「シャープペンシルを買ってほしい」とは言えませんでした。
そして、里親さんのお金を抜き取ったり、万引をしてしまいます。後にそれが発覚して小学校卒業後からはじまった里親家庭での生活は4ヶ月で終わったそうです。
里親家庭での暮らしが終わり、児童相談所の職員と振り返ります。 生活習慣がついていないままであったこと、こうしたい、こうしてほしくないなど自分の気持ちを伝えることの難しさがあったこと。
職員さんから説明を受けたり、自分の気持を聴いてくれたこと後に振り返って「もし、この時に、説明もされずに大人に決められていたなら、うまくいかなかったことをそれを決めた人のせいにしていた思う。職員さんは自分を信じて期待をし、応援してくれた、自分の声を大事にしてくれたことが、起きた出来事を自分で引き受けることにつながったと思っています」と話してくださいました。
講演内容② 「里親家庭や施設等を離れた若者の現状と声」
調査結果を元に参加者のみなさんと共に考えていきました。
まずはじめに、回答した2980人は対象者の14.4%というところに注目しましょう。
回答のない85%の人はどうなっているのかは明らかになっていません。答えが出なかった人たちほど困難な状況になっているかもしれません。
そのことを念頭に置きながら調査を見ていきます。
内容はセミナー資料の 「資料1 児童養護施設等への入所措置や里親委託等が解除された者の実態把握に関する全国調査 概要版.pdf」をご覧ください。
・働き方について、働いてる人の中でも多くの人が、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員という不安定な雇用形態の中に置かれている
・毎月の収入と支出とどちらが多い?注目すべきは赤字の方(支出の方が多い)が22.9%で4.5人に1人はどんどん貯金が目減りしている状態
・病院に行く必要がありながら、5人に1人適切な治療をうけることができない
・施設とのつながりは退所から時間がたつほど、連絡回数が少なくなる傾向にありました
資料2 自由記述項目への回答.pdf
を参加者で共有しました。
自由記述項目への回答を見て、みなさんがどういう心の変化があったのかにフォーカスします。
「改善してほしい」という声の方が多かったのですが、この声をどう捉えるかは個人個人で決めることができます。
「里親家庭の経験者から学べるよりよい環境をつくっていくためのヒントが詰まっている」と捉えることもできますね。
講演内容③ 「子どもの声を尊重するー子どもアドボカシー」
どちらも大人が子どもの声をきちんと聴けていたら防げた事件。誰かを責めるのではなくて、どこに問題があるのかきちんと捉えておく必要があります。
私たち大人が子どものマイクのような存在となってサポートする。 子どもが声を上げる声がちょっと小さかったり弱かったりそういう声をはっきりくっきり正確に届ける役割を果たす。
子どもアドボカシーは養育者だけが行うことではありません。
いろいろな立場の人がそれぞれの角度から子どもの声を聴くこと。子どもの声を尊重しお互いを補完しながら話を聴くことが大切です。
利害関係が強いほど本音が言いにくいもの。
川瀬氏は第三者として利害関係にない立場の人が子どもの声を聴く活動を広く行っています。
出典:一般社団法人子どもの声からはじめよう(https://kodomo-no-koe.qloba.com/)
子どもがどんな人に話しを聴いてほしいかは子どもが教えてくれています。
怒らない人、優しい人、同性がいい、同じような環境で育った人、最後まで話しを聴いてくれる、秘密を守ってくれる、ゆっくり聴いてくれる、明るすぎず暗すぎない人。
最後に、
私たち大人がどういう時に目の前の子どもの思い考えを受け止めることができるかというと、自分自身に余裕がないと難しくなってきます。
教員である川瀬氏も忙しくて気持ちに余裕がないと子供の声を丁寧に聴けていないなと感じることがあるといいます。
よい支援を行うためには、まず支援者自身が権利に目覚め、 権利意識によってエンパワメントされている必要がある。 自分も相手も大切にすることでパートナーシップが築かれる。
私たち大人が、権利意識に基づいて満たされているのかということをチェックしていきながら今日のこの話がお子さんとの関わりを考えるきっかけになれば嬉しく思います。
参加者からいただいた質問
里親家庭で過ごされた時に一番楽しかったことつらかったことは何でしょうか
月に一度、近所の居酒屋さんで食事に行くのが楽しかったです。家族って一緒に食事をしたりとかするもんなんだ 。親が一緒に食事をするのを見たことがなかったで、そういう中にご一緒にさせていただて、楽しかったしいい思い出だなって思ってます。
やっぱりそのそれまでも見ることができなかった夫婦ってこういう感じなんだと経験することができました。
つらかったというか、とても真面目で厳しいな里親さんで里母さんがご自身の成績表を出してきて、見たらオール5とかで「こうやってがんばるんだよ」って言われてがんばんなきゃいけないんだなって思って小学校の時はほとんど学校に言っていなかったのに中学校で上位10%に入りました。それぐらい必死で勉強をしました。
振り返ってみると、いい子でいなきゃいけない。何かをできない、苦手だということが言いにくかったんだろうな適応しようと思って無理はしてたんだろうな、って感じています。
里子の試し行動
試し行動を歓迎できるようになるといいですね。試し行動というのは少なくとも子どもは適応しようとしているということ、関わってほしいのサイン。
でも一人で受け止めるとしんどいので、人とのつながりにいろんな枝葉があるといい。
里親さんのメンタルケアについて
子どもを支える人をどう支えるか。支援者支援。大人の延長線上に子どもがいる。
自分自身も相談に行ったり、メンタルクリニックに行っていたこともある。もっとカジュアルに捉えられたらいい。
こどもの居場所について
学校と里親家庭だけではなく、社会的養護の子どもたちが第三の居場所があるといい、活動しやすい趣味やスポーツなど。
投資と同じで居場所も一極集中ではなく、分散しているといい。
原家族のこと
自分の人生のことなのに隠されるのはアイデンティティに関わる
どういう理由で原家族のことを知れないのか。
真実を知った時にひとりで受け止めるのではなくて同じ姿勢で事実を受け止めてくれる、向き合ってくれる人を確保した上で積極的に 里親さんの中には実親との交流も積極的に行っている家族もある。
里親家庭で育っているのは原家族と切断するのではない。多様な育ち方のひとつ。
アドボカシー活動について
里親家庭と学校の往復で話を聞いてもらえる環境になかったので、もし中立的な立場で話を聴いてくれる人がいたら違っただろうなと思います。
子どもがSOSを発信するルートを確保する。それを里親家庭でどう実現するか。
里親さん自身が里子の言動をどう捉えているのか自己覚知することが大事だと思います。
自分自身のバイアス(思い込み)を知ること、こどもの表面的なことではなく背景にある思いにフォーカスをあてる。
すぐにできることではないかもしれませんが、子どもにとってだれが話しやすいか、多様な窓口が開いているということも大切です。
最後に「里子のコミュニティはありますか?」という質問がありました。地域の里親会では里子の会を設けているところもありますが、ONE LOVEオンライン里親会でオンライン上で里子の交流ができるようにすすめてまいります!
コーディネーター相澤先生よりコメント
・こどもの権利「生きる権利、育つ権利、護られる権利、参加する権利」を大人が実現することが大切。
・子どもを成長させようとしてるのに、自分が成長していないとか自分育てを自分がやっているのか。
・子どもが日頃から自分の思っていることを言える環境をつくっていくことが大事
セミナー資料はこちらからダウンロード
資料1 児童養護施設等への入所措置や里親委託等が解除された者の実態把握に関する全国調査 概要版
資料2 自由記述項目への回答
セミナー資料「子どもの声からはじめようー里親経験者の声と子どもアドボカシーー」
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12月26日13:00-15:00講師奥山眞紀子 氏
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