国連「子どもの権利に関する条約」は1989年に国連総会で採択され、1994年(平成6年)に日本もこの条約を批准しました。条約は国際法であり、憲法の次に守るべきもの。各種の法律より上位のものなのですが、国の動きなどを見ると、なかなかそうした動きにはなっていません。
子どもに関する条約のなかで代替養育(第20条)については「里親委託、イスラム法のカファーラ、養子縁組又は必要な場合には児童の監護のための適当な施設への収容を含むことができる」としています。必要がある場合にのみ施設への収容が可能であるが、基本は里親委託、養子縁組を勧めているわけです。
国連子どもの権利委員会は、批准した国々に、どのように子どもの権利条約を運用しているか報告を義務付けています。最近では、日本政府は第4・5回報告を2017年(平成29年)に行っています。それに対して、委員会からこのようにしなさいという「総括所見・勧告」(2019年・平成31年)が出されています。そのなかで委員会は、子どもに関する基本的な法律を作るように言っています。日本の子どものための法律は福祉、教育などバラバラに作られているからです。
また代替養育関連では「子どもを家族から分離するべきか否かの決定に関して義務的司法審査を導入し」と、一時保護をする際の司法審査と一時保護についてのこれまでの慣行を改めること、速やかな脱施設化を図ることなどを指摘しています。
時期的には前後しますが、2016年(平成28年)に児童福祉法が大幅に改正されました。法律が作られた1947年(昭和22年)から、初めて理念などに手が加えられたのです。改正法では、第1条に「子どもの権利に関する条約の精神にのっとり」と、法律上、子どもの権利条約が明文化されました。そのうえで、第3条2項では「児童を家庭において養育することが困難であり又は適当でない場合は、家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう、また、児童を家庭及び当該養育環境において養育することが適当でない場合は、児童ができる限り良好な家庭的環境において養育されるよう、必要な措置を講ずることとする」とされました。
「継続的に」と書かれているように、養育のパーマネンシーが配慮されています。また、「適当でない場合は」とあるように、特別な場合のみ里親による教育環境でなくてもよいとしています。ここでいわれる「家庭的環境」とは従来の児童養護施設ではなく、まさに家庭的な環境を整備した小規模の施設のことです。
児童福祉法が改正されても、現実との乖離が大きいため、どうしたら里親養育を実現することができるか、「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」が設置され、“新しい社会的養育ビジョン”が提言されました。社会的養護という言葉だけでなく、概念としてそれよりも広い社会的養育といっています。保護の必要な子どもだけでなく家族とともに暮らしている子どもたちも対象にするとしているわけです。そしてショートステイ里親が新たに取り組まれています。
永続的な解決として特別養子縁組を推進する、また家庭養育についても年限を定めた取り組み目標を定める、としました。具体的には、里親委託率を、愛着形成に最も重要な時期である3歳未満については里親委託を概ね5年以内に実現し、また就学前の子どもについては概ね7年以内に里親委託75%以上を実現し、学童期以降は概ね 10 年以内を目途に里親委託率 50%以上を実現する、としたのです。2020年(令和3年)3月末に、都道府県(市)から目標達成の計画が出されていますが、目標は大幅に下回っています。
児童福祉法によって、里親養育を中心に据える方向は示されたのですが、現実との乖離は大きく、どのように国の方針を実現させていくかが問われています。
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