里親が子どもを養育するために都道府県から支給される必要経費のことを専門用語で、「措置費」と呼びますが、2020年度からの措置費は次のように変更されます。
<一般生活費>
乳児 59,510円 →60,110円
乳児以外 51,610円 →52,130円
<里親手当>
※従来、里子2人目は半額だったが同額に変更となった。
里親手当(1人目) 86,000円 →90,000円
里親手当(2人目) 43,000円 →90,000円
専門里親手当(1人目) 137,000円 →141,000円
専門里親手当(2人目) 94,000円 →141,000円
<防災対策費【新設】>
対象:里親
対象経費:防災教育、避難訓練の実施及び防災用具の購入等、総合的な防災対策にかかる経費
補助額:上記にかかる実費の合算額(上限額45万円)
支弁方法:3 月の措置費として支弁する
その他、医療費、教育費、学校給食費、見学旅行費、入進学支度金などの補助がある。メガネ購入とか里親の方から請求しないと支払われないものもあるので注意が必要
里親手当ては養育費とともに措置費として支給されているものです。
ところで措置費については、児童福祉法第57条の5に「租税その他の公課は、この法律により支給を受けた金品を標準として、これを課することはできない」とあります。それなら措置費は課税の対象にはならないと判断すべきです。ところが、平成24年12月26日付けで国税庁個人課税課から『児童福祉法の規定に基づき里親及びファミリーホーム事業者が支弁を受ける措置費等の取扱いについて』という通知が出ています。
これによると、里親への措置費は、児童福祉法第57条の5第1項(租税その他公課の非課税等)に規定する「支給を受けた金品」には該当せず、課税の対象となるとしています。
その理由としては、里親は「社会福祉事業とは位置づけられておらず、事業として行っているとまでは言えないことから、支弁を受ける措置費等については、その者の雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入されることとなる」としています。
そして、「雑所得の金額は、1年間の総収入金額から必要経費の総額を差し引いて計算することとされていることから、必要経費を差し引いた結果、残額が生じない場合には課税関係は生じないこととなる」といいます。
確かに国民の税金から措置費が支払われていることを思うと、きちんと把握することは必要ですが、生活にかかった費用から子どもにかかった経費(養育費)を割り出すには、家計全体を正確に把握することが必要になります。
厚生労働省は『里親に支弁される措置費等に係る具体的な手続き』で「措置費等として支弁された金額(一般生活費等及び里親手当ての合計額)以上に必要経費が生じている場合には、この措置費等について雑所得の金額は生じません」。そして「税務署からの照会があった場合には里親委託に係る金銭の収支状況を説明する必要がありますので、収支状況の記録や書類を整理しておく必要があります。なお確定申告に係る具体的な手続きについては、最寄りの税務署に問い合わせください」としています。
里親手当てについても雑所得に含まれるので、里親会への参加、研修や勉強会、行事への参加費(交通費等を含む)、家族レクリエーションなどの経費が考えられるとしています。しかし育児に関する人件費は含まれていません。
措置費の説明のために家計全体の把握が必要になるとしたら、そのための手間のための事務費が出てもよさそうですが、なんとも一方的な通知です。そしてはからずも、里親は事業とは言えないのだから児童福祉法の57条にはあたらない、としています。児童福祉法の理念の部分(3条2項)では、家庭養育の困難な家庭にはそれに代わる家庭を用意するべきとして里親を重要視していながら、57条は里親家庭を除外するというのです。
平成24年前にはこうした通知は出ていませんでしたので、里親が税の手続きを行うことはありませんでした。措置費が高額になり、税制上無視できなくなって、このような通知が出たものと思います。厚生労働省は、税務署の照会があった場合には、と税務上の問題から距離をとるような対応です。通知が出た当時、厚生労働省の職員に質問したことがあります。その時の説明では、里親が措置費の税務上の問題を税務署に尋ね、その対応について国税庁が動いたと聞かされました。
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