「離婚すると父母の一方しか子どもの親権を持てないという原則は違法」であるとして集団訴訟が起こされていることなどを受けて、単独親権は昨今の話題の言葉として取り上げられています。
そこで今回は、単独親権とはどういった原則なのか、単独親権をめぐる訴訟の近況とともにまとめました。
夫婦が離婚した場合には、そのいずれか一方に親権を定め、他方には親権を認めないという考え方のことです。海外では離婚後も父母の両方が親権を持つ「共同親権制度」を採用している国が多いものの、日本ではこの単独親権の原則を採用しています。
この原則では、協議離婚のときには父母の協議によって、裁判離婚のときには裁判所によって、いずれか一方が親権者として決定され、その旨を離婚届(協議離婚の場合)に記載しなければなりません。なお、離婚調停を申し立てている場合は調停条項に、離婚訴訟を提起している場合は和解条項に、親権者が定められます。
また、子どもの出生前に離婚する際は、子どもの出生後に母親が親権者となりますが、その後に父母が協議によって父を親権者と定めることも可能です。さらに、婚姻していない両親の場合も原則として母が単独で親権を行使するものの、父母の協議により父に親権を定めることもできます。
そのほか、離婚以外の場合(夫婦のいずれか一方が死亡したり,行方不明であったりして親権を行使できない場合など)にも、他方が単独親権者となる決まりです。
※共同親権制度を採用する国の例:アメリカ(ニューヨーク州、ワシントンDC)、カナダ(ケベック州、ブリティッシュコロンビア州)、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、インドネシア、韓国、タイ、中国、フィリピン、イタリア、イギリス(イングランド、ウェールズ)、オランダ、スイス、スウェーデン、スペイン、ドイツ、フランス、ロシア、オーストラリア
親権とは、未成年の子どもを1人前の成熟した社会人とする目的のもとで養育を行うために親に認められた権利・義務であると考えられています。また、民法によって、親は子どもの利益のために親権を行使すべきであると定められているのです。
親権の内容は、大まかに分けて以下の2種類が存在します。
なお、協議離婚の際には、親権者とは別に監護権者を定めることも可能です。監護権者を親権者と別に定めると、その権限の範囲は身上監護権と同一だと考えられています。つまり、監護権者であれば、親権者でなくても子どもと一緒に住んで、子どもを養育することが可能です。
近年の例を挙げると、2021年2月、「民法の単独親権制度は法の下の平等を定める憲法に反する」「2019年の離婚で、息子2人の親権を失ったことにより精神的苦痛を負った」などとして、東京都の50代男性が165万円の賠償を国に求めた訴訟の判決が東京地裁によって出されています。
判決は民法の規定を合憲と判断し、原告の訴えを退けました。具体的には、親子の交流を通じて子どもが成長したり親の人格が発展したりすることについて、「親権を持たないとしても親と子であることに変わりはなく、そうした人格的利益は失われない」と指摘したうえで、単独親権制度は父母関係が良好でない場合も踏まえた合理的なものとし、憲法に反すると言えないとしています。
そして、離婚後も父母の双方が親権を持つ「共同親権」を認めるかどうかについては、「国会の裁量権に委ね、その行使を待つ段階」と述べられました。
単独親権をめぐる問題について、依然として最終的な解決には至っていません。東京地裁では、共同親権や面会交流制度の整備などを国に求める集団訴訟が相次いでいる状況です。
例えば、2020年10月に、東京都・群馬・神奈川・山梨の30~50代の男女6人が東京地裁に対して、国に1人あたり150万円の損害賠償を求めて提訴しています。
原告の6人は「虐待などの特殊なケースを除き、離婚後も両親が共同で子どもの成長を見守るべきだ」と主張しました。また、「離婚後相手方の強制的な連れ去りやDVなどが原因で、子どもと離れ離れになり親権を失った」とも主張しており、非常に切実な訴えであることが分かります。
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