昨今、子どもに対する「しつけ」と称した体罰が相次いで発生していることを受けて、2019年6月に児童虐待防止法および児童福祉法が改正され、2020年4月に施行されました。
そこで今回は、児童虐待防止法および児童福祉法の改正について、改正の経緯やポイントを中心に解説します。
正式名称は「児童虐待の防止等に関する法律」であり、2019年6月に改正され、2020年4月に施行されました。この法律と併せて、児童相談所の体制整備などを定めた「児童福祉法」も改正されています。
児童虐待防止法および児童福祉法の改正趣旨は、以下のとおりです。
●児童虐待防止対策の強化を図るため、児童の権利擁護、児童相談所の体制強化及び
関係機関間の連携強化等の所要の措置を講ずる
最近の動向を見ると、2016年の「児童福祉法等の一部改正(2017年4月施行)」や2017年の「児童福祉法及び児童虐待防止法の一部改正(2018年4月施行)」など、児童虐待防止対策に関する法改正は頻繁に実施されてきました。
しかし、その後、東京都目黒区における5歳女児の死亡事案(2018年3月発生)、千葉県野田市における10歳女児の死亡事案(2019年1月発生)、北海道札幌市における2歳女児の死亡事案(2019年6月発生)など、児童虐待問題が後を絶たなかったことを受けて、2019年の法改正が行われています。
児童虐待防止法および児童福祉法の改正では、虐待を防止するために、親権者などによる体罰の禁止が明確化されました。これは、家庭内で「しつけ」を名目に行われる体罰が虐待につながっている事例が、依然として数多く報告されているためです。
体罰禁止に関する改正箇所は、「児童虐待防止法14条」および「児童福祉法第33条の2の第2項、第47条3項」に見られます。
まず児童虐待防止法14条では、親権者が子どもをしつける際に、以下の2つの行為をしてはならないことが定められています。
●体罰をすること
●民法の820条に規定されている、
監護と教育に必要な範囲を超えるような行為をすること
※親権者が子どもを戒めることを認める民法820条の「懲戒権」に関しては、改正法の施行後2年を目処にあり方を検討するとしています。
次に、児童福祉法の第33条の2第2項では児童相談所長について、児童福祉法第47条3項では児童福祉施設(保育所、子ども家庭センター、児童養護施設など)の長・ファミリーホームの養育者・里親について、対象とする子どもに対して社会で必要なサポート・ケアなど、その子ども自身の福祉のために必要な対応を行えるものの、体罰を行ってはならないことが定められています。
なお、今回の法改正では、体罰が禁止された親以外の者による体罰は当然に許されない行為であるとされています。
また、禁止されている「体罰」および「体罰以外に用いるべきでない心を傷つける行為」の内容についても、明確化されています。たとえしつけのためだと親が思っていても、子どもの身体に何らかの苦痛を引き起こし、不快感を意図的にもたらす行為(罰)である場合、それがどんなに軽いものであっても体罰に該当し、法律により禁止されています。
ここでいう「体罰以外に用いるべきでない心を傷つける行為」とは、怒鳴りつけること、辱めること、笑いものにすること、けなすこと、子どもの心を傷つける暴言などです。以下に具体例を示しました。
●冗談のつもりで「お前なんか生まれてこなければよかった」など、
子どもの存在を否定するような発言をした
●やる気を出させるという口実で、きょうだいを引き合いにしてけなした
さらに、子どもが虐待されている家庭では、DVが発生している事例が少なくありません。そこで、婦人相談所などDV対策を担当する機関と児童相談所との連携を強化し、問題を早期に発見し、暴力から親子を守ることも図られています。
※「DV」について詳しくは「子どものトラウマとその対処法②|女性への暴力・家庭内DVは子どもの発達にも影響を与える」もご覧ください。
◎参考文献:
厚生労働省「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律(令和元年法律第46号)の概要」
厚生労働省 体罰等によらない子育ての推進に関する検討会「体罰等によらない子育てのために~ みんなで育児を支える社会に ~」2020年2月
ガイドブックをシェアする
“心の支え”となるコミュニティ
ONE LOVE オンライン里親会は、里親が抱える日々のつらさやしんどさ、喜びを共有できるコミュニティとしてすべての里親をサポートします。
オンライン里親会は、無料で参加いただけます
メンバー登録をするはじめて知った里親の方へ
ONE LOVE オンライン里親会とは里親や次世代の子どもを支えたい方へ
寄付で支える