里子の法律上の親権者は実親です。養親は、委託にあたり、親権の内「監護・教育・懲戒」の3つの権利が認められていますが、里子の生活に密接に関わってくる医療同意権は実親が持ちます。医療同意権のうち、ワクチン接種の同意について、この記事では考えます。
予防接種実施規則第5条の2第1項によると、
医療機関は予防接種を実施するに当たって、
「予防接種の有効性・安全性」
「予防接種後の通常起こり得る副反応及びまれに生じる重い副反応」
「予防接種健康被害救済制度」
について、予防接種を受ける本人又はその保護者が理解できるように説明を行い、文書による同意を得なければならない
とされています。
ここで言う「保護者」とは、親権を行う者及び後見人ですので、里子の場合は実親になります。
そのため、里子が予防接種を受けるためには、
・実親への電話連絡
・同意文書の郵送
・実親宅への訪問
などにより、児童相談所長等が可能な限り、実親から文書による同意を得るよう努める
こと
とされています
しかし、委託後、連絡が取れなくなる実親も少なくありません。
そのような場合でも、以下にあげる予防接種は、実親に代わり、児童相談所長が同意を行うことで接種を受けることができます。
① あらかじめ決められた期間に1~数回接種することが予定されているワクチン
(ロタ,ヒブ,小児肺炎球菌などの定期接種)
②①以外のワクチン
(おたふく風邪,季節性インフルエンザ,新型コロナウイルス感染症など 予防接種法に基づく接種以外のもの)
※①のワクチンは1~2ヵ月程度、実親と接触を図っても会えなかったり、同意の確認ができなかった場合
※②のワクチンは1~2週間程度、実親と接触を図っても会えなかったり、同意の確認ができなかった場合
なお、予防接種を受ける里子が16歳以上であれば、実親の同意は必要ではなく、本人の同意があれば接種可能です
児童相談所において、里子に未接種の予防接種を受けさせることについて、実親から包括的な同意文書を事前に取得している場合もあります。しかし、地域や児童相談所ごとに、どれくらい熱心に事前に同意文書を取得しようとしているかには差がありますし、もちろん実親の考えにも左右されます。
予防接種、特に定期指定されている接種は、子どもの健康を支える上で非常に大切ですし、また予防接種を受けていないことで、将来の選択肢の幅が狭まる場合もあります。里親としては、出来る限り受けさせてあげたいと考えるのも無理はありません。
事前に同意文書がない場合は、児童相談所の担当職員から実親に都度、連絡を取ってもらうしか現状は手がありません。
ある先輩里親は「児童相談所から実親に連絡を取ってもらっても中々返事がなく、忘れた頃に同意が得られたという連絡が入るから、いつも里子に予防接種を受けさせるときはバタバタします」と話します。いつでも予防接種を受けられるように、問診表は事前に記入して母子手帳などと一緒に保管しておくといいかもしれません。
児童福祉法第47条2項において、里親は、里子に親権者や後見人がいる場合であっても、「監護、教育及び懲戒に関し、その児童等の福祉のため必要な措置をとることができる」と定められています。
この「監護」には予防接種を受けさせることも含まれているはずですが、現状では実親の同意が必要となっています。
この親権の在り方について、社会全体で議論を進めていく必要があると思います。
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