里親の活動はボランティアです。里親手当は支払われていますが労働の対価として支払われているわけではありません。もっとも、労働の対価として支払われるボランティア(有償ボランティア)もあるわけですが。
里親がやきもきすることとして、預かっていた子どもが強引に措置変更になったりしたとき、我が家で暮らす方が子どものためにはよいと思われた時です。児童相談所は、子どもを里親に措置という形で預けます。児童相談所が、子どもの養育の在り方として、他の里親や施設の方がいいと考えた場合は措置の変更が行われます。この場合、里親にはなんら権限がありません。日頃は里親の身分など考えたことがない場合でも、こうした時に、いったい里親にはどれだけの権限があるのか、里親の身分とはどういうものか、考えることになります。
では里親についてはどうでしょうか。長男が知的障害などに陥ったのは里親の責任だとして、埼玉県川口市の両親が、所沢市の里親夫婦と、仲介した埼玉県を相手取り、1億6525万円の損害賠償請求訴訟をさいたま地裁に起こしました。判決としては、県は免れて、里親に8500万円の支払いを命じました。里親保険と、残りは異例の措置ですが埼玉県が支払いました。県の温情がなければ里親が支払うべきものであったということです。
暁学園の判決、「都道府県の判断で措置入所させる場合、施設職員の行為は公務員としての職務として考えるべきだ」は里親にはなされないのでしょうか。埼玉県の場合でも、都道府県の措置によって里親は児童を受託していたはずですが。
施設は法人格を有し、憲法第89条で民間への委託禁止を免れている(国や自治体の代行業務)わけです。それに比べて里親は単なる私人。施設の職員は業務として養育を担っていますが、里親はボランティアで、社会的貢献の範囲です。里親の行う養育が業務であってほしいとはいいませんが(業務として行う里親がいてもいい)、身分保障の上では厳しい立場にいるということになります。
里親が健康を害しているようだから措置した子どもを引き上げる、という判断をした児童相談所があります。全国里親会の調査「里親家庭の全国実態調査」(2016年度・平成27年度)では、最初の子どもを受託した時、里親で心身上の問題があったと回答した里親が28.8%いました。症状としては多岐にわたりますが「体調不良」が最も多く46.0%、「睡眠障害」28.2%、「不安症状」25.4%などとなっており、「病院に通院した」も37.5%となっています。
健康な子どもだけでなく、さまざまな障害を抱えた子どもも多く里親に委託されます。子どもを引き上げる対応より、里親子を支援することの方が大切でしょう。支援のあるなしが問題ですが、対応を誤ると里親と子どもの分離がテーマになってしまいます。
里親の身分が正面から話題になることは少ないですが、事故や健康上の問題はどの里親にもありがちです。里親の身分について考えてみるべきでしょう。
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