ある出来事が子どもにとってトラウマになるか否かは、養育者と子どもの関係性が重要となってくると、「虐待や分離で生まれる子どものトラウマについて」の記事ではお伝えしました。その関係性は、「愛着(アタッチメント)」と呼ばれます。愛着は子どもの健全な発達に不可欠なものです。この記事では、養育者との愛着形成についてご紹介します。
愛着とは、保護者や保育者など養育者との間で生まれる心の絆のこと。アタッチメントとも呼ばれ、イギリスの医学者であり児童心理分析学者であるボウルビィにより提唱された概念です。
赤ちゃんであれば、以下のような行動を養育者が繰り返しとることで、赤ちゃんと養育者との間に心の絆が生まれ、心理的な一体感を感じたり、安心感を持つようになったりします。
・赤ちゃんの生理的欲求を満たしながら、応答的なふれあいや言葉がけを行う
(授乳時やオムツの交換時などの生活行為の中で、視線を合わせたり、ほほえみかけたり、語りかけたりするなど)
・大切にしているという気持ちを具体的な行動で伝える
(こどもの表情や反応を見ながらやさしく抱っこするなど)
・直接の身体接触など、心理的・身体的に近接したかかわりをする
(ふれあい遊びやあかちゃん体操、マッサージなど)
愛着を形成することは子どもの成長にとって大きな意味があります。
人に対する基本的な信頼感を育む
子どもの要望に対し、養育者が適切に対応するという「人に受け入れられる行為」が繰り返されることで、子どもは人への信頼感を育みます。人に対する基本的な信頼感は自己信頼感の形成に繋がります。
探索行動が活発化し、自立心を高める
子どもは自分で動けるようになると、さまざまな探索行動に出ます。その際に、心の絆が結ばれた養育者は、安全基地となります。探索行動中に不安や恐れを感じた時に、養育者の所に戻ることで、不安を和らげ、また探索行動に出る。これを繰り返し、好奇心や積極性、不安などストレスに耐える力を身につけ、自立心を高めていきます。
人と関わる力の土台となる
愛着を形成した相手との、「自分の要望を伝え、それを受け入れられる」「相手の要望を自分が受け入れること」などの経験を通して、子どもは人と関わる楽しさや難しさを学びます。
自己調整力を養う
子どもが快・不快のサインを行動で示し、そのサインに応じて養育者が適切に関わり、子どもに快適さをもたらすように、調節・調整します。この関わりを通じて、子どもは「こういう時にはこうしたら快適になる」という方法を知り、発達を進むと、自分で調節・調整できるようになります。
以上のように、養育者をはじめとする近親者との関わりの中で、まず人への基本的信頼感が生まれます。自立してくると、社会(幼稚園・保育所、小学校、地域など)に目が向き、それらと関わることで社会的信頼感が育ちます。さらに、仲間や友達との関係の中で、ありのままの自分を肯定する自己信頼感が育ってきます。
養育者との愛着形成が育む基本的信頼感をベースに、社会的信頼感や自己信頼感が養われるため、幼少の頃に心の絆がしっかりと結ばれていることは、子どもの将来にとって非常に重要となってきます。
子どもがトラウマになるような出来事に遭遇した時にも、養育者との愛着は重要となってきます。トラウマ体験後、子どもは様々なトラウマ反応を示しますが、トラウマ反応の多くは、安心できる環境や適切な心理的サポートがあれば、自然に回復していきます。
里子が幼少期に特定の養育者との愛着を形成できていない場合もあります。
実際、NHKによる全国の里親を対象にしたアンケートでは、
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「養育で困っていることはあるか」と尋ねたところ、80.6%が「はい」と答えました。
どんなことに困っているか複数回答で聞いたところ、子どもの行動について「基本的生活に難しさがある」が最も多く52.5%、次いで「愛着障害が見られる」が50.9%、「ばれるようなウソをつく」が39.7%でした。
(居場所のない子どもたち(NHK)より)
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という結果も出ています。
幼少期に愛着を形成することは非常に重要ですが、大きくなってからでも愛着の絆を結ぶことはできると言われています。興味がある方は、以下のような書籍で、愛着形成とトラウマについて学んでみてはいかがでしょうか。
焼津市乳幼児教育推進会議『平成 28 年度 保育者資質向上研修会第 1回 愛着の形成は自立の形成(岡村由紀子)』
白川美也子(2020)『子どものトラウマがよくわかる本』(講談社)
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