2021年度、コロナの影響で延期していた里親リーダー交流研修会が12月9日に開催され、兵庫教育大学の海野千畝子教授が「里子養子へのトラウマインフォームドケア/里親養親が巻き込まれ過ぎないためのセルフケア」と題した講演を行いました。
トラウマインフォームドケアは、実子だけでなく、里子養子に対しても実施され得るものです。そこで本記事では、トラウマインフォームドケアとはどういったものか、概要や支援者側のセルフケアなどを解説します。
参考:公益財団法人 全国里親会「里親だより2022夏号 第133号」
トラウマインフォームドケア(Trauma-Informed Care:TIC)は、支援に関わる人々がトラウマへの知識と対応方法を身につけ、支援対象者がトラウマを抱えている可能性を考慮して接することを重視する支援の枠組みです。この考え方では、支援する人々に「トラウマの存在を認識し、その影響を考慮する」という視点が求められます。
2000年代から北米を中心に普及し始めたトラウマインフォームドケアは、最近日本でも医療、福祉、司法、教育などの分野で取り入れられ始めています。この考え方の導入により、トラウマを持つ人々へのより配慮深い支援が期待されています。
トラウマインフォームドケアの考え方が注目されるようになった背景の一つは、1990年代後半から進められた小児期の逆境体験(Adverse Childhood Experiences:ACE)に関する研究です。この研究では、多くの人が虐待や家庭内の問題といった厳しい状況を経験していることが明らかにされました。
さらに、こうした逆境体験が積み重なるほど、行動、心理、健康に関するリスクが高まることが判明しています。すべての逆境体験がトラウマになるわけではありませんが、トラウマに対する理解と適切な対応の重要性が認識されるようになりました。この知見は、トラウマインフォームドケアの考え方を広めるきっかけとなりました。
トラウマという言葉には、いくつかの意味があります。狭義の「トラウマ」とは、生命の危険に直面したり、重大な怪我をしたり、性的暴力を受けたりするような深刻な出来事をさします。例えば、災害や暴力被害、身体的・性的虐待の経験、それらを直接目の当たりにすることなどが含まれます。
この定義はアメリカ精神医学会の診断基準に基づいており、外傷後ストレス障害(PTSD)の診断では、この狭義の「トラウマ」を経験していることが一つの条件です。
広義のトラウマは、個人にとって身体的あるいは感情的に有害で長期的な影響を及ぼす体験も含みます。例えば、子ども時代の両親の別居、家族の精神疾患、家族の自殺、貧困、いじめなどです。広い意味でのトラウマは、人によってその影響が異なるため、より多様な体験を包括する概念と言えます。
トラウマインフォームドアプローチには、以下4つのRがあります。
トラウマインフォームドアプローチの実施にあたっては、上記のポイントを意識することが大切です。
他社が抱えているトラウマを深く理解しようとすればするほど、支援者自身への心理的影響は大きくなります。以下の項目が複数当てはまる場合、セルフケアを積極的に行いましょう。
セルフケアの方法としては、十分に休息を取ったり、信頼できる人と話をしたり、自分なりにリラックスできる方法を探ったりするなどが効果的です。
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