里親を支える

DBS（Disclosure and Barring Service：ディスクロジャー・アンド・バーリング・サービス）とは、「前歴開示及び前歴者就業制限機構」のことです。日本版DBSは、イギリスの制度を参考にして創設の準備が進められています。

性犯罪は再犯率が比較的高いと考えられていることを受けて、DBSでは子どもの安全を守るために危険性の有無がチェックされます。

すでにイギリスをはじめとする諸外国において同様の仕組みが取り入れられており、近年は日本でも「こども家庭庁」の主導によって導入に向けた検討が進んでいる状況です。

日本においてDBSの導入を求める声が高まったきっかけのひとつに、ベビーシッター仲介サービスを通して派遣された男性シッター2人が、保育中の子どもに対して強制わいせつ容疑などで相次いで逮捕された事件（2020年）が挙げられます。

イギリスでは、学校・保育施設・チャイルドマインダーといったほとんどの子ども関連施設・事業について、OFSTED（Office for Standards in Education 教育水準監査局＝準政府機関）に登録することが義務化されています。この登録の際には、DBSの証明書の提出が求められます。そして、雇用者は、職員雇用の際にDBSを提出しなければなりません。

また、DBSのチェックにおいては、確定した犯罪だけでなく、子どもや弱者である大人を対象とする仕事には不適切と考えられる行動に関する通報の履歴も見られます。

なお、このような犯罪歴の記録の開示は、上記に挙げた特定の職業に就く場合に求められ

るものです。犯罪歴のある人がその他の職業について社会復帰をする場合、有罪判決およびそれに続くリハビリ期間を過ぎれば、自らの犯歴を開示する必要はありません。

参考：子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会「イギリスのDBS制度について」令和2年8月28日

現状の日本には無犯罪証明に関する制度はなく、性犯罪者が子どもに関わる仕事に就くことを防ぐ仕組みがありません。

犯罪経歴証明書は海外渡航や国際結婚の際に取得できるものの、雇用時には取得できません。つまり、これまでは、保育所や学校や子どもに関わる団体が小児性愛者を雇用することを防ぐ仕組みがありませんでした。

しかし、2023年4月に「こども家庭庁」が発足し、同庁の施策として「日本版DBS」の導入が進められています。これに伴い、わいせつ行為で懲戒処分となった教員が免許を失効した場合、3年経過すれば再取得できた仕組みを改める「わいせつ教員対策新法」が2022年4月に施行されるなど、現行制度の厳格化の動きも見られます。