CDR(Child Death Review:子どもの死亡事例検証)とは、
医療機関や行政機関など、さまざまな専門家や組織が協力し合い、子どもの死亡事例を詳しく分析し、その結果をもとに効果的な予防策を提案する活動です。
この取り組みの主な目的は、将来的に防げる可能性のある子どもの死亡を減少させることにあります。
子どもたちがより安全で安心して生活できる社会の実現を目指し、令和2年度から一部の自治体でモデル事業としてCDRが導入され、予防のための実践的な対策が模索されています。
こうした活動を通じて、悲しい事故や不慮の死を未然に防ぐ取り組みが進められています。
3つのプロセスと枠組み
CDRでは、次の3つのステップを通じて子どもの死亡を減らすことを目指しています。
①情報収集 | 子どもが亡くなった原因を多角的に把握するため、関係機関から死因、医療的な背景、死亡に至った経緯などの情報を集めます。 |
②検証 |
収集した情報をもとに、医療機関、警察、消防、行政などの専門家が連携し、事例ごとに詳細な背景を理解する「個別検証」と、複数の事例に共通する特徴やパターンを分析する「全体検証」を行います。その上で、再発防止のための対策を検討します。 |
③提言 |
検証結果を基に、地域社会全体で子どもの安全を守るための具体的な予防策をまとめ、行政機関に対して改善案や政策提言を行います。 |
CDR(Child Death Review)は、1978年にアメリカ・ロサンゼルスでDurfee医師を中心に虐待死の見逃し防止を目的として始まりました。
その後、2000年にはアリゾナ州で「予防可能死」という概念が導入され、虐待死だけでなくすべての予防可能な子どもの死を検証対象とする動きが広がりました。
アメリカの研究では、2005年から2015年の間に16万4,261件の子どもの死が検証され、その結果、8万9,040件の提言が出され、うち7,431件が実行に移されたことが報告されています。
これにより、CDRが施策改善に効果を上げていることが確認されています。
イギリスでも、2006年にパイロット研究が行われた後、2008年にCDRが法制化されました。また、2018年にはWHOが各国にCDRを推奨し、世界的に普及が進んでいます。
日本では、2011年に4都府県でパイロット研究が実施され、2014年から2016年に全国規模での調査が行われました。
その結果、予防可能性のある死亡の割合はアメリカやイギリスと同様の水準であることが確認されています。これらの調査をもとに、CDRは国内外で子どもの死亡防止に向けた取り組みとして強化されています。
CDRを、ただ自治体が任命した少数の委員だけが行う業務に留めてはいけません。現場に関わる人々が単に登録作業をこなす形式的なものにしてしまえば、CDRの本来の目的を見失います。
CDRは、地域社会全体の大人たちが「自分たちの子どもたちを守り、死亡リスクを積極的に減らしていく」という主体的な意識を持って取り組むべき活動です。
CDR体制の整備が進む中で、医療従事者にとっては次のような課題が浮かび上がってくるでしょう。
例えば、小児死亡時の対応の標準化、臨床医と法医の連携体制の確立、他機関とのスムーズな情報共有の方法、一般の医療従事者による遺族対応(解剖に関する説明の適切さを含む)など、これまで後回しにされがちだった体制の見直しが求められています。
日本のCDRは、まさにこれから本格的な発展期を迎えようとしています。
子どもの「最後の声」に耳を傾け、遺族に寄り添いながら真に役立つ仕組みを作り上げるために、私たちは積極的にこの取り組みを進めていく必要があるのです。
参考:日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会「24. チャイルド・デス・レビュー」
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