近年、非配偶者間人工授精(AID)や非配偶者間体外受精などの生殖補助医療技術が急速に進化を続けている一方で、子どもの「出自を知る権利」の取り扱いが問題視されるようになってきました。
出自を知る権利とは、子どもが自身の遺伝的ルーツを知る権利のことです。現状として日本ではそれほど浸透していない権利ではありますが、日本も批准している「子どもの権利条約」の第7条においても、「児童はできる限りその父母を知り、且つその父母によって養育される権利を有する」旨が規定されています。
そこで今回は、出自を知る権利の概要や現代における問題、日本で行われている議論などを中心にまとめました。
出自を知る権利とは、「自身がどのようにして生まれたのか」そして「自身の遺伝的ルーツはどこにあるのか」を知る権利のことです。子どもの権利条約の第7条に規定があります。
今後、日本で法整備が進み、「非配偶者間人工授精(AID)※1」や「非配偶者間体外受精※2」などを通じて精子や卵子を提供した者を知る権利が法律で認められるようになったとしても、生殖補助医療技術を通じて誕生した子どもがこうした権利を行使するためには、親が「この技術であなたを生んだ」旨を伝える必要があります。これを伝えてもらわない限り、子どもはその権利を行使できません。
※1.無精子症などの男性不妊が原因で子のできない夫婦が、第三者から精子の提供を受けて子供をもうける手段のこと。この方法によれば、不妊夫婦のみならずシングルマザーとして子供を希望する人や、同性カップルなどにも妊娠の可能性が生まれる。
※2.第三者からの精子提供、卵子提供によって行われる体外受精のこと。
子どもの権利条約について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご確認ください。
子どもの権利条約とは?概要や内容、歴史も解説
自分の遺伝的ルーツを知りたいと思うのは当然のことです。誰しもが、自身がAIDなどで生まれたと知れば、自身のルーツがどこにあるのかを知りたいと考える可能性は十分にあります。
多くの場合、両親がそのまま遺伝的なルーツであり、たとえ死別や離婚のケースであってもある程度は親の人物像は想像できます。養子の場合にも、戸籍をたどる道は保障されている。ところが、非配偶者間人工授精(AID)や非配偶者間体外受精などを通じて精子や卵子を提供した者を知る権利は保証されていません。
知りたいと思うこととは別に、医療を受診する際に親の病歴等を聞かれ、それについて一切答えられない問題も存在します。こうした子どもは自身の体質に自信が持てずに、不安を感じてしまうのです。
近年、こうした悩みを持つ当事者や支援者などから、出自を知る権利を法的に保障するように訴える声が上がってきています。先進国においても、親が子にその出自について開示する比率は低いレベルにとどまっていますが、ヨーロッパではドナーの住所・氏名などの情報にまでアクセスできる権利を認める国も増えてきており、日本でも出自を知る権利の法制化が検討されている状況です。
実際のところ、出自を知る権利は日本ではそれほど浸透していません。この背景には、AIDだけでなく、養子縁組においても「子どもには出自を知らせなくていい(隠したほうがいい)」という昔ながらの考え方が少なからず残っていることが挙げられます。
ところが、2020年12月に、第三者から卵子・精子の提供を受ける生殖補助医療により誕生した子どもの親子関係を定める民法の特例法が成立しました。この特例法では、出自を知る権利に関する規定は置かれず、附則で「おおむね2年を目途として検討する」と触れるにとどまったものの、今後検討が進んでいくことが期待されています。
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