国連子どもの権利委員会はなぜ施設よりも家庭での養育を勧めているのでしょうか。
ながく施設暮らしをしていた子どもが里親家庭にきて、朝食に前の晩の残り物を出したらあきれていたという話を聞いたことがあります。児童養護施設などは、運営上、残り物を翌朝だしてはいけないことになっています。しかし、普通の暮らしのなかではどうでしょうか。
また、ある高校生が、施設から里親家庭にきて暮らし、卒業するときに、なぜ里親家庭ではお風呂に入る時間が決まっていないのか、ずっと疑問に思っていたと話していました。当人にとっては時間が決まっていた方がよかったのでしょう。
普通の暮らしのなかでは時間を決めて何かをするということがあまりありません。家庭のメンバーの雰囲気を見て、自発的に動くことが求められています。そこには、お互いの信頼関係や独特のルールが影響してきます。施設の集団的な暮らしのなかでは、朝起きたら何をするか、お風呂は何時に何分入るべきかなど、時間で動くよう定められています。
養育には養育者のまなざしも重要ですが、信頼し合ってこそ成長があるのです。特定の大人との交流が愛着を形成し、成長を促します。
印象深い本として『犬に育てられた少年』があります。虐待を受けてトラウマを負った子どもたちの治療について書かれた本ですが、この本のなかで、治療行為よりも里親による普通の暮らしの方が効果的な場合があると言うのです。
もちろん専門的な治療が必要な子どもも多いと思いますが、普通の暮らしのなかで病が改善することも多いというわけです。家庭というだけでなく、地域の受け入れも大事だと書かれていました。
家庭の暮らしというものがどういうものなのか、それは、子どもたちが成長をして結婚したり家庭をもったりした場合にも役立つのではないでしょうか。家庭モデルを学ぶ、という観点からも家庭で暮らす体験は大切なことだと思います。
日本では、子どもの頃の暮らしが、大きくなったときにどのような影響を受けたか、といった調査がしっかりとなされたことがありません。たとえばお金の稼ぎ方、使い方なども子どもの頃の体験として大切なことと思います。
里親家庭が大切ではあるのですが、そこにはあたたかく迎え入れ、信頼関係が育まれるような雰囲気が必要です。そのためには、里親自身も自分に対する日々の問いかけが大事です。
※「愛着形成」について詳しくは「子どものトラウマとその対処法➂-2|子どもの生きる力の基礎となる「愛着形成」もご覧ください。
大事なお話を忘れていました。
小さな子ども時代には、特定の養育者とのつながりが特に大事なのです。
乳児院や児童養護施設では仕事としてスタッフが通勤してくるわけで、そうすると、子どもへの対応が時間によって変わります。先進国などでは、同じ養育者の存在が乳児期の子どもの発達には欠かせないという考え方が一般化していますし、実証的な研究もされています。
特定の養育者との信頼が子どもの自己肯定感を作っていきます。また世界や自分が信じられるのも特定の大人との愛着形成から培われます。そういう意味でも、家庭環境で暮らすことが重要と言えるのです。
こうした愛着関係(アタッチメント)の重要性については、子どもの養育のところでもう少し詳しくお話しすることにします。また、国連子どもの権利委員会が乳幼児を特に家庭において養育すべき、ということもこのような事情によるものです。
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