① なぜレスパイトケアをためらっていたのか
『 レスパイトとは「小休止」という意味です。レスパイトケアとは里親が一時的な休息をとり、リフレッシュするための援助を必要とする場合に、他の里親に子どもの養育を依頼することをいいます。レスパイト先は、里親の他、乳児院、児童養護施設などが考えられます。』※1
私は前回、レスパイトの利用にためらいやおごりがあったことを告白しました。それは、目的の「休息」という言葉を狭い意味で捉えていたことが原因でした。
里親を進んで引き受けているのに、自分の休息のためにレスパイトを利用することに大きな抵抗があったのです。
②-1 養育里親は関係機関との連携の中で「社会的な養育」を
~施設と繋がれたことで実感できた里子を社会的に養育する形
しかし、身内の不幸に直面し、緊急でレスパイト利用することを決心しました。そして、利用する目的は単に休息だけではないと思い知りました。
先の※1のレスパイト先として、普段から交流している里親に依頼することが子どもには負担が少ないとあります。これは親戚に実子を預けるような感覚だと思います。里親会などで普段から交流しておくことで、叶う方法でしょう。
しかし、わが家で預かった発達障害がある児童(以下Z君)の場合、服薬管理を例にとっても、仲良く交流している里親仲間に預けることは負担が大きく、パニックを起こしたときの対応も難しいことから現実的ではありません。(専門里親や同じような児童の委託経験がある里親さんは別だと思いますが。)
やはり、専門的な知識や経験豊富な施設に預けた方が適切な支援を受けられる里子もいると思います。改めて、里親研修テキストを読み返してみると、私は制度の本質を見ていなかったことに気がつきました。
最低基準の意義の項に『第19条レスパイトを利用することができる』とあるのです。
そして、そこには『最低基準は、里親養育が里親個人の考えで行われるものではなく、里親を中心としながらも、児童相談所をはじめとする関係機関との連携の中で営まれる「社会的な養育」であることを示しています。』※2 と記されています。
わが家の場合、近くの児童養護施設と繋がれたことが、その後の委託期間のより所となり、里親だけではなく、里子も救っていただけたという思いです。
②-2 里子の「日常」を知り、「理解者」となってくれる施設と繋がれる安心感
それまでは、学校に行っている時間も、デイサービス利用時間も、心が安まることはなく、1日中、Z君のことが心配でした。学校・デイサービスの先生にはとても良くサポートしていただいていましたが、Z君が毎日起こす様々な問題・・・その対応に保護者として悩んでいました。
なぜなら、学校やデイサービスの先生は対応の際に保護者の意見を重要視し、参考にするからです。
しかし、私はそれまでのZ君のことを良く知ることができませんでした。それは、Z君が委託された背景が複雑なこともあり、児相もZ君のそれまでの生活を知っていると言えるにはほど遠い情報しか持っていなかったからです。
ですから、Z君の問題行動に対してどう寄り添うべきかも手探りを繰り返すばかりで、数ヶ月経った頃には行き詰まっていたのです。
ところが、レスパイトを利用し、施設に預けていた期間、はじめは「連絡がくるのかな?」と不安もありましたが施設からZ君が大変だという連絡はなく、むしろ途中で様子を聞くと、「落ち着いて生活できています。」という言葉をもらえました。
そして、レスパイトを終えて帰ってきたZ君は「楽しかったよ」と言ってくれました。
あれほど抵抗のあった「預ける」という行為をZ君が肯定的に捉えてくれたことにまずは救われました。
施設でも少々の問題行動はあったようですが、同じような児童を何度となく経験している施設の先生方にとっては慣れていると言ったところなのでしょうか。施設からは保護者(里親)に対応の解決法を求められることはなく、専門的立場から里親に寄り添っててくれました。
施設と共有できた具体例を1つ紹介します。
食事のマナーで気になる点があったことに対して、施設の先生に伝えるとその行動を見ていてくださって、指導を試みてくれました。里親以外から見て、その行動が正すべきものなのか、そのままで様子を見るべきものなのか、その子に必要な支援を共有できたことは本当に助かりました。
委託解除までの期間、数回、利用させていただきながら、Z君の生活の様子、そして生活の中から見えてくる必要な支援を施設がしっかりと把握してくれたことで、Z君の未来への方向性にも真剣に向き合って貰うことができました。
私にとっては施設の先生方が第2・第3の保護者として、Z君を一緒に支えてくれたことが一番心強く、安心感に包まれました。
③ 里親の訴えだけでは伝わらないこともある。
施設が里子の日常を共有してくれることで三位一体の適切な支援へと繋がった
「里子の日常生活を知る人を里親以外に作っておく」ことは、里親が孤独感に追い込まれないためにも本当に必要なことだと、Z君の委託から私は学びました。
定期的に訪問に来てくれる児相担当者や里親支援専門員に対して、Z君はとても好意を持っており、その訪問を楽しみにしていました。自分の話を良く聞いてくれる大人に、夢中に趣味の話をするのです。その姿からは日常の困難さはみじんも感じさせませんでした。
Z君はその場で起っていること以外を回想して言葉にして、相手に困難を伝えるということ難しいのです。「何か困っていることがある?」と聞かれても「ないです」「楽しいです」と答えます。
訪問という形式ではZ君の場合、SOSがあっても出すことは難しく、本当の支援に繋がっているかと言ったらかなりグレーだというのが率直な意見です。
このような状況なので、訪問の際に関係機関にいくら里親が言葉で日常の困難な状況を伝えても、Z君の受け答えを踏まえて、緊急性は低いと捉えられてしまいます。里親が大げさに伝えていると思われても仕方ないと、途中からは現状を伝えることも心苦しくなっていました。
ですから、定期的に施設にお泊まりをすることで、Z君の日常の姿を把握してもらうことができ、施設からの報告として児相にも伝わります。児相-施設ー里親、本当の意味で連携がとれ、三位一体となり適切なサポートに繋がったというのが私の実感です。
養育計画(委託当初)の段階で、里子が問題行動を起こしたとしても対応できるよう、施設と繋がりを作っていたら、困難が減っていたのでは、、、と感じています。
レスパイトケアは里親が必要と求めたときに応えてくれる価値ある制度です。その価値は関係機関が里子の「内面」を「日常」の中から見つめ、把握してくれることにあります。
わが家と似たようなケースで委託をすることになる新米里親さんはぜひ、レスパイトケアをご家庭に合った形で利用できるように関係機関と早くから連携を進めることを私はお勧めしたいと思い、今回はハードな内容ですが共有しました。
新米里親さん、これから里親になる皆さんがそれぞれの家庭を築いていく中で、私の経験が「情報」としてほんの少しでもお役にたてたら嬉しいです。
読んでいただきありがとうございました。
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